「心配するな。大体、お前が学校の日はわたしだけでやってることなんだから」

「おじいちゃん、ありがとー! じゃあ、凪を借りるね」

わたしもできるだけ明るい声を出した。

「ああ、行っておいで」

「なんだよ、ふたりとも……。なんか変なの」

凪はぼやきながらも、まんざらでもない顔をしている。

わたしは凪の背中を押して、無理やり作業所から連れ出した。

「早く着替えて! 準備して」

「わかったから、焦るなって」

まるで電車ごっこのように凪を押していきながら、おじいちゃんのほうを振り向く。

おじいちゃんは『すべてわかっている』という顔で、うなずいてくれた。

わたしは『ありがとう』の意味を込めて、笑顔をを返した。

もし凪の頭の中からわたしの記憶が消えたとしても、それでも忘れられないような思い出を作りたい。

今日はわたしと凪の大切な一日。
記憶がなくなっても忘れられない、そんな一日にするんだ、と決意していた。