甘くて優しい味のミルクティーの香りが部屋中に広がって、ミルクティー色の膜がこの時間をくるむ。大きな大きな膜で。

「こういう時間を作れば良かったんですよね」

と、ぽつりと亘理さんが言ったので、え?と首をかしげる。

「こうして二人で夜に少し話して、ゆっくりお茶を飲んだりする時間を。何に悩んでいるとか、何が自分を苦しめているかとか、そういうことは話さなくても、くだらない話とかする時間を五分でも作れば良かったのかなあと」

「そういうのは大事ですね、……きっと」

「ミルクティー、本当に美味しいです」


にこりと笑う彼の細くなった目元を眺めながら、私はありがとうございますと微笑んだ。




仕事の話をしている時と、今とじゃえらく違う。
穏やかで、とても優しい感じ。

ミルクティーみたいな。


明日の朝はココアを飲んだらココアみたいになるのかな。

私の同居人は、ちょっと変わった不思議な人。