気になっていたことを尋ねると、彼は、ああとどこかのんきな反応を見せてふと笑った。

「それが、お店は停電にならなかったようで。問題なかったです。ラッキーでした。ですが、おそらく急きょ休みになるパートさんがいますから、カバーしていただけると助かります」

分かりました、と返しながらも心底安心した。

停電になっていたら、お店の商品で冷蔵冷凍のものは廃棄。そうなると新たに一から在庫を出すことになり、手間も増すし売り場の変更を余儀なくされるから大変だったと思う。
それをしなくていいだけでも助かった。


言われた通りに店舗へ入ろうとして、足を止める。
私に背中を向けて雪かきを再開している亘理さんに、「あの」と再び歩み寄った。

「はい、なんでしょう?」

身体を起こして、こちらを振り返る。
その優しい眼差しを見るだけでここまでドキドキしてしまうとか、私はもうかなり彼にやられている。

「昨日は、ありがとうございました……その、色々と」

すみません、という常套句じゃなくてきちんとしたお礼を伝えたかった。

抱きしめてもらったことを思い出して、恥ずかしくなって一人でモゴモゴしていると、あちらもあからさまに視線をそらして、一言だけ「はい」と返すのみだった。


ぺこりと頭を下げて、急いで通用口から店舗へと飛び込む。
今日も変わらずに好きだなあという自分の気持ちを再確認して、とても暖かい気持ちになれた。