急いで自転車に乗ったものの、大事なことに気づいた。
「そ、そういえば私、ふたり乗りってしたことないんだけど……わっ!!」
言い終わる前に津崎が地面を強く蹴って、自転車はぐいっと前に進んだ。
その勢いのままペダルを足につけて漕ぎはじめると最初は重たく感じていた自転車も違和感なく走ることができている。
ふたり乗りって、けっこう簡単かも……!と、油断しているとまたバランスを崩しそうになって、慌ててハンドルをまっすぐに戻した。
「あぶねーなっ!しっかり漕げよ」
後ろから津崎の文句が飛んできた。
「うるさいな。そっちこそ体がでかいんだから重心気をつけてよね!」
「あ?」
津崎はふざけるように体を揺らしはじめて、それに合わせて自転車が左右に動く。
「う、嘘嘘、マジでごめんっ。だから揺らさないで……!」
「はは、めっちゃ焦ってんじゃん」
からかうような津崎の声にムカついたけれど、なんだかとても楽しい気分。
……こんな感覚、久しぶりだ。
ずっと欠けていたものが埋まっていく感じがする。
コンクリートに映るふたつの影がなんだかくすぐったくて、津崎のシルエットはやっぱり私よりも大きい。ついついその影ばかりを見すぎてしまい、また自転車がふらついた。
暫くしてたどり着いたのは丘のようになっている崖の上。草原になっているこの場所は新緑が生い茂っていて、蒸し暑いはずなのに空気はとても澄んでいる。



