ばいばい、津崎。



「あ、えっと、世界史Aだよ」

すんなりと自分が選択している科目を言うことができた。


「私日本史だから途中まで一緒にいこう」

「うん。ちょっと待ってて」

私も机から教科書を用意して美喜と廊下に出ると、選択授業へと向かう生徒たちがたくさん行き交っていた。


そんな人混みを歩いていると、隣の教室であるA組から誰かが飛び出してきて、私は避(よ)けきれずにぶつかってしまった。

その反動でバサッと、手に持っていた教科書とノートが下へと落ちていく。

私が拾う前に「ごめん、大丈夫!?」と、ぶつかってきた男子が素早くしゃがんでくれた。


「はい」と教科書を渡されて顔を見ると……それは哲平だった。


哲平の顔もすごく幼い。だけど目鼻立ちが整った顔立ちは16歳から変わらない。


――『だって俺、皐月のこと好きだもん』

トリップする前夜に言われた言葉が頭に浮かんだ。


哲平は学生の時から女子にモテてていたけれど、成績や容姿が優れすぎていたせいか高嶺の花のような扱いをされていて、みんな想いは伝えずに見ているだけだった。

そんな哲平がずっと私のことが好きだったなんて、今でも信じられないけれど、少なくとも現時点では私たちは友達関係にもなっていない。


「本当にごめんね」

哲平はもう一度謝って、廊下を歩き去っていった。