ばいばい、津崎。



そんな私の考えを打ち砕くような声が飛んできた。


「ただの同情なら〝健太〟がいなくなって皐月が島を出る2年間の間にどうにかしてるよ」

そう、切なそうに哲平が眉を下げる。


たしかに私は津崎を失ってボロボロになった。
だから残りの高校生活をどのように過ごしたのか記憶は今でも途切れ途切れだ。


海に囲まれた島で、海に近づけなくなった。むせ返るように暑い日差しが憎らしかった。

そして私は津崎との思い出の場所を避けるようになって、ただ息をしているだけの存在になった。

無心でいなければ、悲しさに飲まれてしまうと思った。『大丈夫、いつか津崎は帰ってくる』と自分に言い聞かせなければ、心が壊れてしまうと思ったから。



「……私は、津崎を忘れることなんてできないよ」

それはきっと一生、不可能だ。


「それでもいいよ」

「……よくないよっ!」

私は強い目で、哲平のほうを向いた。私が大きな声を出したタイミングでセミたちの声が一斉に止んで、今は呼吸を躊躇うほど静かだった。


「お互いにちょっと寂しくなった時にご飯を食べに行ったり飲んだり、そういう楽しく過ごせる友達のままでいいじゃん。……別に付き合うとか結婚とかにこだわらなくてもさ……」

ギュッと手に力を入れて、うつむいた。


「だって俺、皐月のこと好きだもん」

哲平のその言葉で、酔いが一気に冷めていく感覚がした。笑うにしても怒るにしても、明日には綺麗さっぱりと忘れられていたらいいのに、私の思考は可笑しいぐらい正常だった。


「……ごめん……」

私は突き放すように謝った。