ばいばい、津崎。



「奥さんと子どもが待ってるでしょ。早く帰ってあげな」

私はそう言って剛の背中を押す。剛は「じゃあ、また連絡する」と、駅のほうへと歩いていった。


ひとりになって、私は近くのコンビニへと入った。そこでミネラルウォーターだけを買って、ペットボトルにシールを貼ってもらった。


外に出て、ひと口飲みながら私は行き交う人たちに目を向ける。まだ時間は20時過ぎだから、サラリーマンやOLがこれから食事をしようと、次々と飲食店へと入っていく。

私はというと、すでに出来上がっていて、救急車で病院に運ばれたことなんて遠い昔に感じてしまうほど、なんだかいい気分。


そんな中で、スーツを着た男性が私の前を通りすぎた。なにやらとても急いでいて、その人物の横顔がスローモーションのように私の瞳に映る。

さっきまでただの酔っぱらいのように目が虚ろになりかかっていたのに、一気に瞬きの数が多くなる。


「……哲平?(てっぺい)」

気づけば、その背中に呼びかけていた。