ばいばい、津崎。



私が一番乗りだと思ったのに、防波堤に着くとすでに美貴と剛と哲平が揃っていた。

美貴は「ここからダイブしてみてよ」なんて剛の背中をわざと小突いていて、「やめろよ、バカ!」と、高校生の頃のようにふざけ合っている。


海へと続く一本のコンクリート。

この場所に来ると、海風と一緒に津崎の匂いを感じることができた。


「一緒に来れてよかったよ」

私の影に寄り添うように哲平が隣に並んだ。


「うん。私もみんなと来れてよかった」

津崎がいなくなって、今日で10回忌。こうしていつものメンバーで過ごすことができて、津崎が一番喜んでいるとお思う。


「俺さ、両親にお前もいい大学を出て、将来は親父みたいな医者になれって小さい頃から言われて育ったんだ」

薄茶色のサラサラとした哲平の髪の毛が揺れる。


「勉強はそれなりに好きだったけど、色んなことをそつなくこなしていたら、いつの間にか完璧すぎて近づきにくい人って、周りから言われてたことは知ってる。そんな中で、みんなと遊ぶようになって、はじめて勉強以外の楽しさを覚えたんだよ」


あまり感情を表に出さない哲平が、島の雰囲気に押されるように唇も緩やかに動く。
  

「俺、あんまり負けた経験がないんだけど、人生で負けたと思ったのは健太にだけかな」


その瞬間、まるで津崎が「当たり前だろ」と返事をするような強い風が私たちの頬を通りすぎた。