すると、コンコンと部屋がノックされてお母さんの声が聞こえた。
「皐月、ちょっといい?」
用件も告げられずにリビングに行くと、そこには50代ぐらいの男性が立っていた。
「お付き合いしてる飯島さん。今日皐月がうちに来るからどうしても会ってほしくて」と、お母さんが紹介してくれた。
パートナーがいると、前から知っていたけれど、私が実家に帰らなかったこともあり、なかなか顔を合わせる機会がなかった。
「はじめまして。飯島です」
噂には聞いていたけれど、すごく優しそうな顔つきで、この人ならお母さんを守ってくれるなって安心した。
「娘の皐月です。母がいつもお世話になってます」と、会釈をすると「もう、ふたりともそんなに固くならないで!」とお母さんに言われて、互いにそれもそうだと、笑みが浮かぶ。
飯島さんは、家族になっていく人。そうやって、少しずつ変わっていくのだ。
これからも、この先も。
そのあと三人でお昼ごはんを食べて、気が早いけれどお正月にはまた島に帰る約束もした。
そして私はまた外へと出掛けた。荷物を置いてきたからだろうか。とても肩が軽い。
ううん、軽いのはきっと、26歳の今の私がちゃんと地に足を着けているからだ。



