「結局、津崎は歩いてゴールしたよね」
足が長いから私たちがちょこちょこ走るのと変わらないスピードだったのが悔しい。
「走るなんて面倒くせーじゃん」
投げやりな言い方をしながら、津崎の右耳のピアスがキラリと太陽に反射した。
「カッコいいね」
「今さら気づいたか」
口元をゆるませる悪ガキのような顔。不覚にもドキッとしてしまった。
私が言ったカッコいいは、周りに流されずに自分の意思を貫く姿勢に……と弁解したいところだけど、嘘。
カッコいいよ、津崎は。
口は悪いけれど、嫌われることを恐れずに剛を奮い立たせたところとか、お礼を言われるのがイヤでゴールしてすぐに私たちから離れたところとか。
なんか正義のヒーローみたいで、憧れる。
津崎は眠たそうに大きなあくびをして〝まだいたの〟という顔で私のことを見た。
はいはい、どうせ邪魔でしょうと私は美貴たちの元へと戻ろうと、歩きだす。
各ポイントに散らばっていた先生たちも集まりはじめていて、そろそろグラウンドへの集合が呼びかけられる頃だ。
正門の周りに植えられたソメイヨシノの木からは絶え間なくセミたちが大合唱していて、そんな鳴き声に交ざって聞こえてきたのは――。
「山本」
胸の高鳴りとともに、私はすぐに津崎のほうを振り向く。
「足、あとでちゃんと保健室いけよ」
誰にもバレていないだろうと思っていた痛みが、嬉しさと悔しさで、熱くうずいた。
やっぱり津崎はヒーローかもしれない。
突き放したと思えば引き寄せる。
私の心ごと、全部。



