だけど津崎は空気を読むどころか、さらに続けた。
「自力でゴールできないなら置いていくしかねーじゃん」
「そんな言い方はないと思う」
食い気味に反論したのは哲平だった。
哲平は片ひざを地面から離し、津崎と向かい合うように距離を詰める。
「みんなで協力すれば肩を貸しながら行くこともできるし、それでもダメなら俺がおぶっていく」
まだ剛と親しいわけではないのに、哲平の献身的な言葉にみんなが胸を打たれていた。でも津崎は顔色ひとつ変えない。
「女からも肩を借りて、そのうえ背負われてまでゴールしたところで笑われるのはコイツだよ」
そう言って津崎の視線が剛に向く。
「お前はどうしたいんだよ?」
そしてそのまま強い口調で問いかけた。
「肩を借りておぶられてゴールしたいのかよ。なんのために9kmも走ってきたんだよ」
剛は津崎に背中を押されるようにおぼつかない足で立ち上がり、その瞳にはもう疲労は感じられない。
「俺は自分の力でゴールしたい」
そう言い返した剛からはランナーズハイよりももっと特別なエネルギーのようなものを感じた。



