食卓テーブルにはこんがりと絶妙なきつね色に焼けたトーストに、ぷっくりと黄身がふくらんだ半熟の目玉焼き、瑞々しい海ブドウとレタスのサラダ、牛乳氷入りのミルクが並べてられていた。
起き抜けで喉がカラカラだったオレは自分の席に座って、真っ先にグラスを掴んで冷たいミルクを半分一気に煽った。
うちはもともと牛乳を凍らせた氷をグラス半分に入れて、そこに牛乳を入れて飲む。これだと氷が溶けても水っぽくならずに、むしろ濃くなっていくから、冷たくてたまらんほどうまい。なんでも、母さんが若いころ北海道に住んでいた時、行きつけの店の人から教えてもらったのが始まりらしい。
これが、でーじ、うまい。
半分ほど飲み干したグラスをテーブルに置くと、その小さな衝撃で、中の牛乳氷がしゃりんと涼やかな音を鳴らした。
「お母さん、兄ィニィ起こしてきた!」
キッチンにタタッと飛び込んで行った翔琉が、母さんの赤色のエプロンに飛び付くと、「ありがとう」と愛おしそうにその頭をひと撫でしてから、こちらを振り返ってオレと目を合わせた。
「おはよう、結弦」
「おはよう」
トーストに手を伸ばそうとしたオレに、母さんが少し探るような笑みを向けてきた。
「ねえ、結弦。急で悪いんだけど朝ごはん終わったら、ちょっと頼まれてくれない?」
嫌な予感がした。キッチンからいそいそと出て来た母さんは、食卓テーブルの上に八重山藍染の風呂敷を広げると、その中央に3段の重箱弁当をドンと置いた。そして、慣れた手つきで器用に包み始めた。
「これ、診療所に届けてきて欲しいの」
「えーっ! なんでさーっ! えー! えーえーえー! 」
あからさまにウゲーと顔を顰めてでっかい声を出すと、母さんの横にいたビビりの翔琉が小さな肩をびくっと弾ませた。
「だってさぁ、オレ、今日はこれから律と約束があるんだしさあ!」
と、言っても昼頃の約束だけどね。
「診療所に行っとったら遅くなってしまうしさ! 母さんが行けばいいさ!」
ブーブーと文句をたれるオレには脇目もくれず、母さんは再びキッチンへと戻り、せっせと手際よく食器を片付けながら背中で言い返して来た。
「母さん、これから民宿に行って、おばあちゃんたちのお手伝いすることになったのよ」
とにかく甘えん坊で母さんのことが大好きな翔琉は、金魚のフンみたいに、母さんの周りをうろちょろとついて回っている。
「えー、なんでね?」
「今朝からフェリー動いてるんだって」
起き抜けで喉がカラカラだったオレは自分の席に座って、真っ先にグラスを掴んで冷たいミルクを半分一気に煽った。
うちはもともと牛乳を凍らせた氷をグラス半分に入れて、そこに牛乳を入れて飲む。これだと氷が溶けても水っぽくならずに、むしろ濃くなっていくから、冷たくてたまらんほどうまい。なんでも、母さんが若いころ北海道に住んでいた時、行きつけの店の人から教えてもらったのが始まりらしい。
これが、でーじ、うまい。
半分ほど飲み干したグラスをテーブルに置くと、その小さな衝撃で、中の牛乳氷がしゃりんと涼やかな音を鳴らした。
「お母さん、兄ィニィ起こしてきた!」
キッチンにタタッと飛び込んで行った翔琉が、母さんの赤色のエプロンに飛び付くと、「ありがとう」と愛おしそうにその頭をひと撫でしてから、こちらを振り返ってオレと目を合わせた。
「おはよう、結弦」
「おはよう」
トーストに手を伸ばそうとしたオレに、母さんが少し探るような笑みを向けてきた。
「ねえ、結弦。急で悪いんだけど朝ごはん終わったら、ちょっと頼まれてくれない?」
嫌な予感がした。キッチンからいそいそと出て来た母さんは、食卓テーブルの上に八重山藍染の風呂敷を広げると、その中央に3段の重箱弁当をドンと置いた。そして、慣れた手つきで器用に包み始めた。
「これ、診療所に届けてきて欲しいの」
「えーっ! なんでさーっ! えー! えーえーえー! 」
あからさまにウゲーと顔を顰めてでっかい声を出すと、母さんの横にいたビビりの翔琉が小さな肩をびくっと弾ませた。
「だってさぁ、オレ、今日はこれから律と約束があるんだしさあ!」
と、言っても昼頃の約束だけどね。
「診療所に行っとったら遅くなってしまうしさ! 母さんが行けばいいさ!」
ブーブーと文句をたれるオレには脇目もくれず、母さんは再びキッチンへと戻り、せっせと手際よく食器を片付けながら背中で言い返して来た。
「母さん、これから民宿に行って、おばあちゃんたちのお手伝いすることになったのよ」
とにかく甘えん坊で母さんのことが大好きな翔琉は、金魚のフンみたいに、母さんの周りをうろちょろとついて回っている。
「えー、なんでね?」
「今朝からフェリー動いてるんだって」



