オレの質問に、シャリ、と音を鳴らして律はシャーペンをルーズリーフの真ん中で止めた。そして、エヘンとひとつ咳払いをして、始業式の校長先生の挨拶のように話始めた。
「いいかね、比嘉結弦くん。これはあくまで喜屋武律という男の考えだけどね」
そう前置きして、律は続けた。
「どんなことがあっても、杏の味方でいてやりたいしさ。杏の全部を受け止めてやりたい。そんな感じだね」
あくまでオレはだぜ、と律は言い、再びシャーペンを走らせる。
「おおおー。さすが彼女持ちの男は言うことが違うさぁー」
やっぱり彼女とうまくいきよるイケメンは、言うことまでイケメンだねえ。
ちょっとバカだけどね。律はそこがいいのさ。
「じゃあなにさ。結弦は愛莉ちゃんの全部受け止めてやりたいと思ったことなかったのかね?」
痛い箇所をひと突きされ、おおれはどもりながらもなんとか否定した。
「い、いやぁ、そ、そういうわけじゃないけどさ……よく分からん」
オレと愛莉が付き合っていた時間はあまりにも短くて。
ケンカする暇がないくらい、短くて。
始まったと思ったら、もう、終わっていた。
まるで線香花火みたいにさ。
「まあ、あとは結弦の気持ち次第だよね。オレは愛莉ちゃんとやり直すこと、前向きに考えてみてもいいと思うけどね」
カツカツとノートを写しながら律が言う。オレはシャーペンの芯が僅かずつすり減っていくさまを見つめながら、「どうしてそう思うのさ?」と聞いてみた。
「だってさぁ。性格いいしさ、可愛いしさ。杏とも仲良しみたいでよく話題に出るけど、悪口なんか一度も聞いたことないしね」
愛莉がいい子なのは、オレだってよく分かっている。
「もう一度さ、ちゃんと話し合ってみたらどうだね? 今度はうまく付き合っていけるかもしれんしさぁ」
「……愛莉と?」
律が無言で頷く。
「そうさぁ。明日の夏祭り。いいキッカケじゃないかね。どうせ結弦のことやさ。腹わって正直な気持ちぶつけたりしたことないんじゃないの?」
さすが、律だ。
小さい頃からずっと一緒におるからか、オレよりオレのことを分かっているのかもしれない。
勉強はできないけど、あなどれないやつだ。
いつも痛いとこを突つきまくるよるなぁ。
「一度話し合って、愛莉ちゃんの気持ち聞いてやるといいよ」
「……うん」
「まずは行動に移す。やらないと始まらんしさ、始まらないと終わりもないんだしね」
うっわー、聞いた? 聞いた?
オレ、今、でーじでーじかっこいいこと言わなかったかね?うっわー、かっこいいー、オレー!
と律は自画自賛して、自画自賛した自分に照れていた。
何事も前向きでちょっとバカな親友に背中を押されたオレは、1日遅れで愛莉に返事を出した。
「いいかね、比嘉結弦くん。これはあくまで喜屋武律という男の考えだけどね」
そう前置きして、律は続けた。
「どんなことがあっても、杏の味方でいてやりたいしさ。杏の全部を受け止めてやりたい。そんな感じだね」
あくまでオレはだぜ、と律は言い、再びシャーペンを走らせる。
「おおおー。さすが彼女持ちの男は言うことが違うさぁー」
やっぱり彼女とうまくいきよるイケメンは、言うことまでイケメンだねえ。
ちょっとバカだけどね。律はそこがいいのさ。
「じゃあなにさ。結弦は愛莉ちゃんの全部受け止めてやりたいと思ったことなかったのかね?」
痛い箇所をひと突きされ、おおれはどもりながらもなんとか否定した。
「い、いやぁ、そ、そういうわけじゃないけどさ……よく分からん」
オレと愛莉が付き合っていた時間はあまりにも短くて。
ケンカする暇がないくらい、短くて。
始まったと思ったら、もう、終わっていた。
まるで線香花火みたいにさ。
「まあ、あとは結弦の気持ち次第だよね。オレは愛莉ちゃんとやり直すこと、前向きに考えてみてもいいと思うけどね」
カツカツとノートを写しながら律が言う。オレはシャーペンの芯が僅かずつすり減っていくさまを見つめながら、「どうしてそう思うのさ?」と聞いてみた。
「だってさぁ。性格いいしさ、可愛いしさ。杏とも仲良しみたいでよく話題に出るけど、悪口なんか一度も聞いたことないしね」
愛莉がいい子なのは、オレだってよく分かっている。
「もう一度さ、ちゃんと話し合ってみたらどうだね? 今度はうまく付き合っていけるかもしれんしさぁ」
「……愛莉と?」
律が無言で頷く。
「そうさぁ。明日の夏祭り。いいキッカケじゃないかね。どうせ結弦のことやさ。腹わって正直な気持ちぶつけたりしたことないんじゃないの?」
さすが、律だ。
小さい頃からずっと一緒におるからか、オレよりオレのことを分かっているのかもしれない。
勉強はできないけど、あなどれないやつだ。
いつも痛いとこを突つきまくるよるなぁ。
「一度話し合って、愛莉ちゃんの気持ち聞いてやるといいよ」
「……うん」
「まずは行動に移す。やらないと始まらんしさ、始まらないと終わりもないんだしね」
うっわー、聞いた? 聞いた?
オレ、今、でーじでーじかっこいいこと言わなかったかね?うっわー、かっこいいー、オレー!
と律は自画自賛して、自画自賛した自分に照れていた。
何事も前向きでちょっとバカな親友に背中を押されたオレは、1日遅れで愛莉に返事を出した。



