「わっさん、わっさん(ごめん、ごめん)」


早とちりしてしまったさ、と律は再びノートにシャーペンを走らせる。


が、またすぐにその手を止めた。


「結弦。それ、愛莉ちゃんにも言っておかないと誤解されてしまうよ?」


「はあ? なんでね。なんでそこで愛莉が出てきよーる」


「だってさ、アレだろ?」


律はシャーペンの先端をくいっとオレに向けて首を傾げた。


「お前、愛莉ちゃんから言われたんだよね? やり直したいってさ」


確かに。


夏休み前、終業式のあと、愛莉から呼び出されたし、そう言われたけど。


「いーやあ、それなんだけどね。まあ、見ろ、これ」


オレは昨日、愛莉から送られてきたラインメッセージを画面に表示させて、スマホを律に手渡した。


「……なんでね?」


と、それを見た律が眉間にしわを寄せて、さらに首を傾げる。


「結弦、お前まだ返事してないのか? なんでね?」


なんでね? 、って律は簡単に聞いて来よるけどさ。


意味が分からないからに決まってるからじゃないか。


オレはあからさまにでっかいため息を吐き出して、律からスマホを奪い返した。


「エー、オレはもうどうしたらいいのか分からん!」


ぶっきらぼうに吐き捨てて、オレはそのまたゴロリと床に寝転んだ。


冷房で冷えた床はひんやり心地よくて、混乱するオレの体の熱を吸いとっていった。