律は深海のように少し陰りのあるブルーブラック色の目をしている。


日本人の父と、アメリカ人と日本人のハーフの母から生まれた律は、クウォーターなのだ。


そして、勉強が大っ嫌いで赤点をとることが得意なちょっとバカで、でも、明るいイケメンだ。


「律?」


慣れない勉強で……といってもオレのを写してるだけだけど、ついに頭の線がショートしよったか?


オレはゲームを中断させ、ベッドから下りるとテーブルで固まる律の正面に座った。


そのノートを覗き込んで見ると、まだ途中だ。


「なにー。まだ終わってないじゃないかあ」


カカカ、と笑い飛ばしてやると、律は固まったまま課題ノートを見つめ、低い声で言った。


「結弦。お前、オレに隠しよることあるよな?」


「はあ? なんね、突然。なんもないっさあ」


バカかあー、と右肩をバシバシ叩くと、律はガバッと顔を上げ、キッと鋭い目付きでオレを睨んだ。


「ほんとうね?」


そして、握っているシャーペンの先端をノートに打ち付けた。


芯がペキッと折れて、ノートの上をころころ転がる。


「これはオレたちの友情に、でーじでーじ関わってきよることだば!」


ブルーブラックの瞳がギラギラしよる。


「はあーっ?」


一体、なにをそう興奮しよるのか。


「隠すなよー結弦よー! オレ、杏から聞いてしまったんだしさー!」


と、今度は焦げ茶色の髪の毛をワッシャワッシャと両手で掻き乱し、嘆き出した律の話を聞けばこうだった。