愛莉との恋は、まるで線香花火みたいに一瞬で終わってしまった。


付き合っていたのは、高1の7月から10月までのたった3ヶ月の間だった。


同じクラスになって、自然と目が合うようになったのがきっかけで、仲良しグループ数人で夏祭りに行った時に告白された。


愛莉は小柄で可愛くて、とにかくよく笑う子で。


誰に対しても平等に接する、真っ直ぐで優しい、陰日向ない性格で。


だから、オレも好きになった。


でも、いざ付き合った途端になんでかすれ違いばかりで、うまくいかなくて、結局振られてしまった。


オレが情けなかったのだ。


そのあとは気まずくて話もしなくなっていたけど、2年になってもまた同じクラスになって、仲良しグループも同じになって、また普通に話すようになった。


愛莉は1年の頃と何も変わっていなくて、やっぱりいい子のままだった。














翌日、オレは朝から自転車を走らせ、隣の集落の律の家に向かった。


昨日の埋め合わせをする。課題を手伝って欲しい。タコライス付きで。とリベンジの連絡があったのだ。


課題を手伝ってくれ、と言っても律がオレの課題を丸写しするだけなんだけど。


冷房をガンガンに効かせた部屋で、律は必死にオレの課題ノートを写し、オレは律のベッドに寝転びスマホアプリでゲームをしていた。


オレが来たのは9時頃だった。


あれからもうすぐ2時間が経過しようとしているのにまだ写し続ける律は、まだ夏休み前半だっていうのにそうとう課題を溜め込んでいたらしい。


「律、まだ終わらないかね」


声を掛けるても反応なし。


「大丈夫かね……そんなんで午後から杏と映画観に行く余裕あるのか?」


オレはスマホ画面を連打しながらケラケラと笑ってやった。


内嶺杏(うちみね あん)は、オレたちの幼なじみの女の子で、中学の時から律と付き合っている。


今日もこのあと午後からふたりで出掛ける予定らしい。


カリカリ、カリカリ、涼しい部屋に響いていたシャーペンの音が突然ピタリと止まった。


「お? ついに終わったかね?」


横を見ると、律はなにやら思い詰めた面持ちで、シャーペンの芯をノートに押し付けたまま固まっている。


焦げ茶色のやわらかそうな髪の毛、耳にはピアス。


目はキリッとしていて鼻は高く、まつ毛も長い。


その瞳の色は隔世遺伝らしい。