真っ黒でさらさらの髪の毛に、父さん譲りの黒曜石みたいにくるんと輝くまあるい瞳。母さん譲りの色白の肌と形の整った小ぶりな唇。食が細く、もやしのようにひょろりとした体型の翔琉はこの春から小学1年生になったばかりだ。
「どうしたのさ、翔琉。おいで」
10も歳が離れていると、弟というよりもう自分の子供みたいに思えてくる。目に入れても痛くないというのはきっとこのことで、オレは弟が可愛くてたまらん。
「どうしたのさ? 宿題で分からんとこでもあるんか?」
オレが屈み込んで目線を合わせて聞くと、翔琉は遠慮がちにドアの陰に体を隠しながらふるるっと小さく首を振った。
困ったもんさ。
翔琉は小学校に上がるまで病気がちで、月の半分は寝込んでいるような子だった。その過去を本人なりに気にしているのか、どうしても内気な性格に育ってしまった。気持ちは誰よりも優しいけれど、いかんせん気が弱く、男のくせになよっちい。
同級生の女子との口げんかにさえ一度も勝ったことがないらしい。言い負かされてベソをかいて帰って来るなんてしょっちゅうだ。
おじいやおばあたちはもちろん、父さんも母さんも、そして特にオレが一番。翔琉が可愛くて可愛くて、つい甘やかしてしまうのがいけないのかもしれん。
「翔琉、どうしたのか? 言ってくれんと兄ィニィ分からんよ」
もう一度、おいでと手招きをすると、ようやくひょっこりと姿を見せて、部屋の中に入って来た翔琉がトトトッとオレのそばに駆け寄って来た。
「あのさあ、兄ィニィ」
そして、蚊の鳴くような声で言った。
「お母さんがさ、兄ィニィ起こしてきてって。早く朝ごはん食べなさいってさ」
「そうかね。ありがとね、翔琉」
その小さな頭をぐりぐり撫回してやると、翔琉はくすぐったそうに肩をすくめてひゃーと照れ笑いしながら「うん」と大きく頷いた。内気で気弱で軟弱だけど、誰よりも優しい心を持っている翔琉は、オレの自慢の弟だ。
「翔琉、何時に起きよったか?」
「6時さ。もうさ、オレさ、今日のぶんの宿題できたよ」
まだ小さな胸を張って、少し得意げに報告してくるのが健気で愛おしい。
「えらいなあ、翔琉。兄イニイも見習わんといけないねえ」
翔琉と話しながら1階へ降りてリビングへ行くと、すでに冷房が心地よく効いた空間に、トーストと卵焼きの香ばしい匂いがふわふわと漂っていた。対面式のキッチンの奥ではエプロン姿の母さんが忙しなく動きまわっとった。
「どうしたのさ、翔琉。おいで」
10も歳が離れていると、弟というよりもう自分の子供みたいに思えてくる。目に入れても痛くないというのはきっとこのことで、オレは弟が可愛くてたまらん。
「どうしたのさ? 宿題で分からんとこでもあるんか?」
オレが屈み込んで目線を合わせて聞くと、翔琉は遠慮がちにドアの陰に体を隠しながらふるるっと小さく首を振った。
困ったもんさ。
翔琉は小学校に上がるまで病気がちで、月の半分は寝込んでいるような子だった。その過去を本人なりに気にしているのか、どうしても内気な性格に育ってしまった。気持ちは誰よりも優しいけれど、いかんせん気が弱く、男のくせになよっちい。
同級生の女子との口げんかにさえ一度も勝ったことがないらしい。言い負かされてベソをかいて帰って来るなんてしょっちゅうだ。
おじいやおばあたちはもちろん、父さんも母さんも、そして特にオレが一番。翔琉が可愛くて可愛くて、つい甘やかしてしまうのがいけないのかもしれん。
「翔琉、どうしたのか? 言ってくれんと兄ィニィ分からんよ」
もう一度、おいでと手招きをすると、ようやくひょっこりと姿を見せて、部屋の中に入って来た翔琉がトトトッとオレのそばに駆け寄って来た。
「あのさあ、兄ィニィ」
そして、蚊の鳴くような声で言った。
「お母さんがさ、兄ィニィ起こしてきてって。早く朝ごはん食べなさいってさ」
「そうかね。ありがとね、翔琉」
その小さな頭をぐりぐり撫回してやると、翔琉はくすぐったそうに肩をすくめてひゃーと照れ笑いしながら「うん」と大きく頷いた。内気で気弱で軟弱だけど、誰よりも優しい心を持っている翔琉は、オレの自慢の弟だ。
「翔琉、何時に起きよったか?」
「6時さ。もうさ、オレさ、今日のぶんの宿題できたよ」
まだ小さな胸を張って、少し得意げに報告してくるのが健気で愛おしい。
「えらいなあ、翔琉。兄イニイも見習わんといけないねえ」
翔琉と話しながら1階へ降りてリビングへ行くと、すでに冷房が心地よく効いた空間に、トーストと卵焼きの香ばしい匂いがふわふわと漂っていた。対面式のキッチンの奥ではエプロン姿の母さんが忙しなく動きまわっとった。



