ビー、ビビ、と枕元でスマホが震えてはっと目を覚ました。


「……誰ね」


画面をタップし、寝ぼけ眼をパチパチさせる。


【おはようさん
 今日ヒマかね?
 課題手伝ってほしくてさ
 もちろんタダとは言わん
 タコライス付きさ
 どうだね?】


『タコライス』の文字を発見した瞬間、眠気は完全に吹っ飛んだ。


いいね。


悪い話じゃないさ。


そのラインメッセージは、親友であり幼なじみでもある喜屋武律(きゃん りつ)からだった。


午前8時。


くああっ、と顎が外れてしまいそうなほどの大あくびをして起き上がる。


スマホを握ったままベッドを出て窓辺に立ち、勢い良くカーテンを開けた。


両腕を上にぐぐーっと伸びをすると、もうひとつおまけのあくびが出た。


昨日までの台風がウソみたいに穏やかな朝だ。


「いーやあ、晴れたねえー」


いい天気さ。


外は清潔な青空が広がっている。


【仕方ないね
 手伝ってやるさ】


メッセージを送ると瞬時に既読になり、また直ぐに返ってきた。


【助かった!
 さすが結弦だね
 昼頃ウチに来れるかね?】


OK 、とスタンプを押した時だった。


こつん、こつん、と部屋のドアがふたつノックされ、数センチ弱開いた隙間から小さな顔を覗かせたのは10歳下の弟、翔琉(カケル)だった。


「兄ィニィ」