どんなに嫌なことがあっても、落ち込んでいても、トワイライト色に包まれる時間の浜へ行くと、荒れ狂った心がすうっと軽くなって穏やかな気持ちになれる。


黄昏時の凪いだ海のように、平凡だけど平和な毎日だった。


『あの、これ、デイゴの木とちゃいます?』


そうさ。


あの日、彼女が現れよるまでは。


『大丈夫や。死んだりせえへんよ。心配せんでも、うち、そこまで弱ないわ』


ジャンヌダルクなのか、マリーアントワネットなのか。


『結弦くん。うちな、疫病神さんなんやって』


天使なのか、悪魔なのか。


よく分からん、謎だらけの不思議な子だった。


『うちがここに来た本当の理由、結弦くんにだけ教えてあげるわ』


台風が過ぎ去った翌日の、良く晴れた暑い暑い日だった。


『神さんがいてはる島や、聞いたからや』


突として、平凡平和だったオレの日常に彼女が現れよったのは。