俺を何と受け取ったのかはわからないけど、黒い猫は俺の手の方へやってきた。
「さ、ご主人のところへいきな」
――魂を、強制的に黄泉へおくる。
黒猫は、あの日の桃子のように光に包まれていく。
――死は、否応なしで強制的だ。納得して逝くことが出来る魂は数少ない。
だから、というわけではないけど、俺も対象の心残りを総て消しておくってやれるとは思っていない。
むしろ出来ないと思っている。
でも白は違う。出来るだけ、全ての魂を『救いたい』と思っている。
人間だろうが、動物だろうが、妖異だろうが、霊だろうが。
白の考え方は否定しない。でも、俺には理解出来ないんだ。
どうしてそんな風に考えるか。
そういう『人間らしさ』が、俺にはわからない。
黒猫は、光の泡となって消えた。
黄泉で飼い主と逢えるかなんてわからない。
でも、俺には『おくる』以外に出来ることがない。
……死に対して涙を持たない俺は。
……だから、少しだけ未来に、誰かが救われていることだけは、願うようにしている。
たとえば、桃子のように。



