月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】



俺を何と受け取ったのかはわからないけど、黒い猫は俺の手の方へやってきた。


「さ、ご主人のところへいきな」
 

――魂を、強制的に黄泉へおくる。


黒猫は、あの日の桃子のように光に包まれていく。
 

――死は、否応なしで強制的だ。納得して逝くことが出来る魂は数少ない。
 

だから、というわけではないけど、俺も対象の心残りを総て消しておくってやれるとは思っていない。


むしろ出来ないと思っている。
 

でも白は違う。出来るだけ、全ての魂を『救いたい』と思っている。


人間だろうが、動物だろうが、妖異だろうが、霊だろうが。
 

白の考え方は否定しない。でも、俺には理解出来ないんだ。


どうしてそんな風に考えるか。


そういう『人間らしさ』が、俺にはわからない。
 

黒猫は、光の泡となって消えた。
 

黄泉で飼い主と逢えるかなんてわからない。


でも、俺には『おくる』以外に出来ることがない。
 

……死に対して涙を持たない俺は。
 

……だから、少しだけ未来に、誰かが救われていることだけは、願うようにしている。
 

たとえば、桃子のように。