あれ。
ふと空気が揺れたから、そちらへ視線を送る。
電柱の影に、しっぽが見えた。猫かな。
《黒藤》
「わかってる。遅刻しない程度に、な」
無月に答えてから、電柱の方へ歩いた。すると、ひょっこり顔を出してくる。
真っ黒の猫だった。……やっぱりか。
左手に印を組んで、結界を張る。
人の往来があるから、普通の人には気取られないようにしないと。
「おいで」
しゃがんで手を差し出すと、警戒の瞳で見て来る。
……死霊。動物霊でありながら、現世に心残りがある。いや、こいつは飼い猫だったな。
……ここで飼い主が亡くなったのか。
この猫自信は老衰で死んだが、この辺りで事故死した主人を探してここまで来てしまったようだ。
ここにほかの霊体は感じられないから、事故死した主人はもう昇天しているようだ。
……これは白の得意である記憶回顧の術と似た効果を得られるが、俺の場合勝手に対象の情報が流れ込んでくる。
……鬼の血の影響か。



