月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】



あれ。
 

ふと空気が揺れたから、そちらへ視線を送る。


電柱の影に、しっぽが見えた。猫かな。


《黒藤》


「わかってる。遅刻しない程度に、な」
 

無月に答えてから、電柱の方へ歩いた。すると、ひょっこり顔を出してくる。


真っ黒の猫だった。……やっぱりか。
 

左手に印を組んで、結界を張る。


人の往来があるから、普通の人には気取られないようにしないと。


「おいで」
 

しゃがんで手を差し出すと、警戒の瞳で見て来る。


……死霊。動物霊でありながら、現世に心残りがある。いや、こいつは飼い猫だったな。


……ここで飼い主が亡くなったのか。
 

この猫自信は老衰で死んだが、この辺りで事故死した主人を探してここまで来てしまったようだ。


ここにほかの霊体は感じられないから、事故死した主人はもう昇天しているようだ。
 

……これは白の得意である記憶回顧の術と似た効果を得られるが、俺の場合勝手に対象の情報が流れ込んでくる。


……鬼の血の影響か。