縁に涙雨のメシを頼んで、隠形(おんぎょう)した無月を伴って庵(いおり)を出る。
過日(かじつ)の冬芽からの依頼は、桃子の昇天で解決となった。
あれから二週間経って、二、三回冬芽の様子を見に行ったけど、目に見えて落ち込んでいた。相
当惚れ込んでいたみたいだ。
けど俺たちから、桃子の家族の話が冬芽にもれることはない。
冬芽の依頼は、『桃子の家族を探してくれ』、ではないからだ。
桃子が生前の総ての記憶を持っていたことも、逢いたいと言っていた対象が弟であったことも、冬芽に報告はされない。
人間が陽、妖異が陰、その境界線上に立つ陰陽師(俺たち)は、線引きはしっかり引かないといけない。
実はこの、俺たちには基本的なところ、白のウィークポイントだったりする。



