「ええ。最初から申し上げているように、わたしは華取桃子です」


「憶えているんでしょう? 彼女は真実貴女の娘であり――彼は貴女の弟であると」
 

桃子は表情を変えない。
 

それだけが反応だった。俺は続ける。


「その、理由も。察していないはずがない」


「……あなたはタチが悪いですね」


「よく言われます」


「神宮は――」
 

桃子は、軽く右手を挙げ、何かを包むように手を開いた。


「司に次ぐ神祇三家のひとつです――」


桃子の掌に、光の球が浮かぶ。
 

神祇とは、簡単に言えばバランサーだ。