その質問に私は狼狽える。
最近の晶人さんがなぜか甘えたモードなのは知っていた。

でもなんで、よりによってこんな時期に限ってそんな意地悪な質問するんだろう。


晶人さんが好きな私は、ズルい私でしかないのに。


「酔ってる?」

なんて誤魔化して、私はふと晶人さんに目を向けた。


そして、後悔する。

「酔ってるように見える?」

鋭い瞳の晶人さんに目があったから。

「………見えない」

「だね」

沈黙が場を支配した。

晶人さんと私の間に、こんな心地の悪い沈黙が落ちたのはこれが初めてだ。


「ねえ、僕が好き?」


「なに言ってるの……?」

「好きって言って?」




「__好き」


嘘じゃない。
でも、本当でもない。

所詮、私はそんなものしか持っていないのだ。

神様が私にふさわしいと言ってくれたのかもしれない。
全く、神様は皮肉屋だなぁ。


こんなのお似合いすぎて、否定できないじゃないか。


だから、私は神様のお望み通り、この手に確実にある唯一のものを愛そう。


「晶人さんが、私は好きだよ」


明明後日の夜、霧蒼が現れなかったら。



「大好きだよ」
「うん。僕も」