透明人間の色




私はペットボトルをスクールバックに押し込んだ。


それは私のような偽善者がよくやること。
それは自分に必要のないもの、でも拾ってあげないと可哀想なものを、拾うフリをして見えない場所に隠してしまうこと。

他人からも、自分からもその都合の悪いものを隠してしまうのだ。

例えば、いじめられている人がいたとして、いじめっ子の目の前でその子を庇う?

私は何もしなかった。
でも、偽善者だから可哀想なその子と友達になった。

その子がいじめのせいで精神的な病気になっても、私はその子の側にいながら何もしなかった。



ただ、側にいた。自分の偽善のために。



『次はー駅前。お降りの方はボタンを___はい、次停まります』

学校帰りに私はもう四回既にボタンを押している。信号機に、自動販売機。また信号。そしてバスのボタン。世の中ボタンばっかりだ。



自分の意思をボタンで伝える。それはきっと、とても楽で便利なことなのだろう。



横断歩道は誰もいないのに青になったりしないし、自動販売機は無駄にいっらっしゃいませとかありがとうございましたなんて言わないから早い。バスの運転手は全部のバス停を止まらなくていい。



全てがボタンで伝わるなら世界はもっと楽で便利になるのだろう。



でも、少なくともそれは私の事実ではない。

世の中こんなボタンなんかじゃ絶対伝わらない想いが存在してしまう。


そして、それが私にとってすごく嬉しいことだった。


バスはほどなくして停まった。私は運転手さんにお礼を言って降りる。運転手さんにどう思われようと関係ないけど、私は一般的な偽善者だから誰にでもよい顔をしたいし、知らない人であろうとその苦労をねぎらわねばならぬという勝手な正義を持っているからだ。

しかし、この駅前は私の家の近くでは決してなかった。今日は用があってここへ来ているのだ。

三分ほど歩いて一つの高い建物の前で足を止める。そこはホテルで最上階には高級レストランが入っていた。

間違っても制服の女子高校生が一人で入るところではない。


でも、私も例に漏れず一人ではなかった。



「晶人さん」