「それで、どうしてこんなところに?」

晶人さんは車を出てくるなり、私を抱きしめた。そしてこのセリフはそれからしばらくして二人車に乗り込んだ時に晶人さんが今日始めて発したもの。

だが、私は晶人さんが現れた時から、私はなぜか違和感を覚えている。

それは言葉にできない、ほんの少しの違和感。気のせいだと片付けられるほどに本当に少しだけ。

「…イケメンを探して」
晶人さんの詰問に答えようがなくて、私は仕方なくそう半分だけ誠実に答えた。今夜のことは晶人さんでもこれ以上語れない。

「ここがどんなに危険な場所か分かってて来たの?」

晶人さんの説教は嫌いだ。正しくて虚しくて。でも一番は晶人さんに父親づらされるのが嫌だ。

早く終わって___。



「………分かってたつもりだけど、分かってなかった」


「だよね。もう二度と行かないって約束して」
「約束する」

約束は嫌いだ。なんでこんなこと言ってるんだろう。そう言えば、さっきもあの男の子と約束してしまった。それこそ何の躊躇いもなく。



私は私の言葉の無責任さを良しとしてしまったのだろうか?



そう考えた途端、怖くなった。

「美香ちゃん?」
「晶人さん………私っ」

私は一体どうしたんだろう。

この世のすべてが色あせて見える。たくさんの色でグチャグチャになっていた色が、この手から溢れ落ちていく。


「私はっ___」
その先は言葉には出来なかった。


私はとんでもない偽善者で、自分には似合わないような日常を身の程知らずにも愛し、その日常を守ってくれる人に甘えて、しかもそれを良しとしていた。

でも、ちゃんとそんなのはおかしいと思ってたはずなのだ。それがどんなに心地よくても、きっと結局はダメになるから、人は傷つけ傷つくことをやめられないから、このままではいけないのだと。



なのに、今さらになって何も思わなくなった。
自分の甘えを容認するようになっていた。







罪悪感が自分の欲にかき消されるになったら、もうそれは化け物でしかないのに___。