炭酸はあと一口。
達也や楓との問題に比べたら、炭酸なんて楽勝だ。
「みかー」
「ん?」
「大好き」
くぐもった可愛い声。でも私は心が冷えていくのを感じていた。
その告白に私は答えられないから。
楓が愛しい。それは本当。でも、信じられないくらいに真っ直ぐな楓は、綺麗すぎて自分の汚なさが浮き彫りになって___楓なんかいなければと思ってしまう。
だから、楓は忌み嫌われる。
本当にどうしようもなく、地の底まで堕ちてしまえばいいのにと、そう思ってしまうから。
そして私はその例外___でもなんでもないのだ。
「楓はさ、嫌いな奴いないの?」
そう言った瞬間、楓は勢いよく顔を上げて私をまじまじと見た。
「そういう美香は?」
「え?」
「私は……たぶん分かってるから達也くんを追い返してくれたんだと思うけど、さっきの男子とか嫌いだし、このクラスの女子は怖い。………だから、私達也くんの飲んだのに口はつけれない」
「そっ、そっか」
心臓がどくんどくんと速い。走る鼓動の理由は___知りたくない。
「だけど、美香は誰に対してもそういう感情抱いてないように見える」
違う。
違うよ。
全く違う。
楓はバカだ。またそんな適当なこと言って、そんなわけないじゃん。私は普通の十七歳の女子高生。
そんな神様みたいに誰のことも嫌いにならないわけがないじゃない。
だから__
「そんなことないっ」
意地を張って叫んでしまった。
そう。きっとそれだけ。
「……ご、ごめん。美香」
楓は驚きで泣きそうになっている。
嫌だ。泣かないでよ。困るの。
「ごめん、大きな声だして。あー、ほら。私の嫌いな人も教えてあげようか?」
「美香………?」
「私の嫌いな人はさ___」
その時、私を誰かが包み込んだ。
「達也くん⁉」
楓の驚き見開いた瞳の中に、私を後ろから抱きしめた達也がいる。
私はそのまま全てを達也にゆだねてしまいたかった。
だけど、それはもう出来ない。
あの日にそれは卒業したから。
これは本来もう差し出されるはずのない手だから。


