達也が驚いた顔で私を見下ろす。
「炭酸好きだっけ?」
「うん。だから残り全部私にちょうだい」
ペットボトル奪い取ると、達也が顔を真っ赤にしてこちらを見た。
「なに?」
私はただ早く達也にどこかへ行って欲しいだけなのに、何を照れることがあるだろうか。
「いや、だから、コップ持ってんの?」
「は?」
「直接そんまま飲むわけ?」
あー、なるほど。そういうことか。
「飲むよ。だからもう行きな」
平然とした顔でそう返すと、達也は目をそらす。
「おう」
仲間の方へ行く達也は出す手と足が同じだ。私は笑いをかみ殺す。
不意にその仲間の一人が私を見てニヤニヤし出した。
何やら声をひそめて達也に言ってるけど、達也に軽く殴られてその場を後にしていく。
私は頬杖をつきながらそれを見送った。
「………間接キスねえ。楓、飲む?」
私がそう聞くとやっと少し顔を上げた。
「飲まない」
「そう」
頷いて私は達也にもらった炭酸を眺めた。楓の答えは予想していたけど、生憎達也が不審に思った通り、私は炭酸が苦手だ。
暑い今日の太陽に誓って言うが、この世で一番美味しい飲み物は冷たい水だ。
でも、達也はこのペットボトルが空になってないと傷つく。楓も。
私は手の中で弄んでいた炭酸のボトルキャップをあけた。
久しぶりに飲む炭酸はやはり嫌いだった。まあ、コーラじゃなかっただけましだろう。
「美香ちゃん」
「ん?」
「ごめんね」
半分も顔が見えてないけど、どんな表情をしているかくらい見なくても分かる。
「………なんのこと?」
そうすっとぼけた私に楓は答えない。唇を噛んで泣きそうな顔が思い浮かんで、私は無意識に頭をかいた。
楓はこういう時だけ鋭いんだから困る。
考えてみれば、炭酸が苦手だと前に言ったような言ってないような。
定かではない。
私はもう一口炭酸を飲んでみせた。
「言っとくけど、後から飲みたいって言ってもあげないからね。私、最近炭酸に目覚めたから」
「えっ?ほんと……?」
「___私は私のメリットになることしかしないよ」
目の前でしょぼくれた顔をいつまでもされているのも嫌だから、頭を撫でてあげる。一瞬ビックリしたように肩が上がった楓だが、その後は気持ち良さそうにされるがままだ。
せっかく可愛いのに髪が私にグシャグシャにされることを気にもしてない。それどころか、止めないでと言わんばかりに私の手にすり寄ってくる。
ああ、やっぱり楓に嫌われるところなんて一つもない。
私は楓から手を放した。


