透明人間の色





リビングのソファに座った晶人さんの膝の上で私はもらったアップルパイをほおばった。その間、晶人さんは何も言わずにただ私を抱きしめてくれる。

こういう時の晶人さんは、まだ何も言ってないんだけど、まるで全てを知ってるんじゃないかと疑ってしまう。

そして、それでも私を抱きしめてくれるのだと、信じたくなる。



私の全部を受け入れてくれる人がいるのだと、自惚れを抱かせるその手は、魔法使いのフリをした悪魔の手。


私はもうその悪魔の手を離さない。



なんだか自然と歪んだ口角に、慌てて私はアップルパイをもう一口かじった。

まだ温かくて、甘い香りが鼻をくすぐる。

なにもかも完璧だと錯覚するほど、この世界は私によく合っているんだと思う。


ここでは私は何をやっても許される。


たとえ、私がとんでもない偽善者でも、だ。

私は人のために何もできなくてもいいし、人を傷つける心配もしなくていい。



ただ、悪魔の手だけを愛すればいい。