透明人間の色





『___どれくらい?』


俺は黙り込んだ。

今は午前八時。終わるのは早くとも十一時だ。



「………ちゃんと、帰ってくるから。明日はずっと一緒にいよう?」




『そんなの遅いっ!』


突然の叫びに俺は戸惑った。

美香がこんなになるのは初めてだった。美香の両親が死んだとき以来かもしれない。


『………ごめん、晶人さん』


よほどのことがあったのだろう。

美香がこんな風になんの躊躇もなく俺に会いたいと言ってくるなんて、どう考えてもおかしい。

この美香の精神状態は、ある程度昨日の様子で覚悟していたことだった。

だが、自分が思っていた以上に用事とやらが済むのは早かったようだ。

少なくとも午前中は電話はかかってこないとそう思っていたから、昨日は頷いたのだ。



『本当に仕事なの?』

「うん」

『私、我が儘?』

「そんなことないよ」


こんなときに限って、平凡な言葉しか出てこない。


そんな自分を呪った。

なんで俺は一旦計算が狂うと、再び計算するには時間がかかるタイプなんだ?


『分かった___』

「うん」




『でも、独りは嫌っ………!』