私はその場でただ涙を流した。


声が出なくて、ただ魁音を見つめていた。


生きろ。


ごめん。


ごめんね。


桜。


桜の分も私が生きなきゃいけないのに、私すっごい情けない。


今まで、名前を呼べなくてごめん。


桜の木を見れなくてごめん。


おねぇちゃんらしくできなくてごめん。


助けられなくて、ごめん。


魁音が私を優しく抱きしめる。


「雫は充分苦しんでるよ。だから、笑ってよ。笑いたい時くらい、自由に笑えよ。桜ちゃんだって、雫の笑顔みたいじゃん。だろ?」


私はこくこく頷く。


桜、私、桜の分も生きる。


生きるよ。


ちゃんと前を見て進むから。


毎日、仏壇の前で話すから。


頑張るから、見てて。


私のこと、見ててくれる?


すると、さっきまで止んでいた風が急に吹いてきた。


桜が・・・・・・・返事してくれたみたい。


私は笑った。


「ありがとう、桜。」