全身で歌わないと、魁音のギターに負けてしまう。


私達はいつも即興で演奏していた。


たまに歌詞を書いてみることもあったけど、即興の方がやりやすい。


魁音は楽譜を書けるらしく、いつも歌い終わったら五線譜に書いていた。


すごいなっていつも感心。


見ているのは美紅さんだけだけど、それで良かった。


誰かに届けたいわけじゃない。


ただ、音を鳴らしていればそれで良かった。


サビの部分に入ると、魁音が私の方を向いて向かい合わせになる。


向かいあって歌うとワクワクしてくる。


魁音もたまにハモってくれる。


魁音の声は私よりも優しい声をしている。


歌っている時は何も考えないですむ。


自由になる瞬間。


学校が終わってから電車の時間までずっと歌う。


私は電車だけど、魁音は歩いて行ける距離に家があるらしい。


だから来るの早いんだろうけど。


それにしても魁音の学校は終わるの早いよなー。


歌い終わると私達はニコっと笑いあった。