ドクン、ドクンと、私の鼓動が速くなる。


ハチはそのまま私の頬を触って、また求めるような瞳をしていた。


「前に興味ないって言ったけど、他の人には興味ないだけだから。俺が触りたいのはナナだから」

この雰囲気はヤバい……。ハチは私の首筋をなぞるように触ってきて、私は制止するように「ま、待って!」と声を出した。


「きゅ、急に男にならないで……」

とっさにそんなことを言ってしまった。


「ん?どういう意味?」

ハチがきょとんとした表情をしている。 


「わ、私まだ心の準備が……さ」

付き合う前はハチに男の部分なんて感じなかった。

そういう目で見てなかったってこともあるけど、普段はワガママで『ねえ、ナナ~』と甘えるような姿が多いのに、こうして突然、男になったりもする。


ハチのことは好きだし、イヤなわけじゃない。

私がただ単に、まだ子どもなだけ。


私の言いたいことを察したようで、ハチがクスリと笑った。


「ナナもそういうこと考えるんだ」

「え、めっちゃ考えるよ!」

しまった。なんか私が変態みたいじゃない?


「ち、違うからね。考えるというか、ハチとそういうことになったら、と考えてるだけで……」


なんだか顔から火が出るほど恥ずかしい。ハチは押し倒していた私の体を元の位置に戻して、そっとおでこにキスをした。


「好きだよ、ナナ。でも別に焦ってないし、ナナとはおばあちゃんになっても一緒にいるんだからゆっくりそうなって行こうよ」


ハチが私を安心させるように頭を撫でてくれた。