「僕のこと描いてよ」
「セイくんを?」
「ダメ?」
「いいよ!」
まるで絵画から飛び出てきたような、こんなに綺麗な人を描けるなんて、またとないチャンスに胸が躍る。
わたしは、鞄から筆箱を取り出した。
「カッコよく描いてね?」
「……頑張る」
「どんなポーズとればいい?」
「そうだなぁ……」
思い出すのは、数時間前の出来事。
雨に濡れてたセイくんの、映画のワンシーンみたいな姿。
綺麗、だったなぁ……。
「ちょっと遠くを見つめるみたいな感じ……できる?」
「オッケー。まばたきは、してもいい?」
「もちろん」
えんぴつを動かしながら、この時間がずっと続いて欲しいなと思っている自分がいた。
「セイくんあのね、この絵、すぐには出来上がらないかも」
時間をかけて、丁寧に描きたいな。
「……いいよ。何時間かかっても」
「もうすぐご飯だし、セイくん帰らなきゃだし……」
「帰った方がいい?」
「……へっ?」
ベッドにもたれかかっていたセイくんが、突然、隣にいるわたしに覆いかぶさってくる。
ええ、こ、これは一体……!?
「ちょ、セイくん……っ、」
セイくんの体温が、伝わってくる。
「せ、セイくん……ってば……」
おかしい。返事がない。
聞こえてきたのは……
スースーという、寝息。