才華龍学院 Ⅱ


夕方まで個人戦が続きようやく終わりのアナウンスが鳴った。

観客たちは続々と会場をあとにしていく中燐たちは会場に残っていた。この後どうするか話していた。

「俺と紅葉はこのまま帰ってゆっくりする」

柳は珍しく欠伸をしながら答えた。
蓮との試合で疲れがいつも以上に出たのだろう。

それを理解している燐たちは頷きその場で解散となった。アーミャとカインは屋台をまた周り、燐と堺人は近くにある演習場に向かった。

「どうしたんだ?急に付き合って欲しいだなんて」

演習場には人はおらず、広いフィールドには燐と堺人の2人だけであった。

燐は堺人に向き合って口を開いた。

「今日見た柳の融合魔法を試してみようと思って」

燐は少しウキウキ気分でそう言った。
それに堺人はクスッと笑い なるほどね と納得した。
まぁ、少しだけそうだろうな と思っているだろうが...

「それだったら、僕もしてみようかな...」

堺人も魔法を扱うのは自信があるし、燐にも劣らないだろう。
それぞれ新たな魔法を使うために2人は意見を挟みながら魔法を放った。

(最初は融合するところから...
得意な魔法でするのが成功率は高いだろうけど...相性もあるし...闇は光以外基本は大丈夫だと思う...)

燐はまず、闇と雷を融合してみることにした。
まずは、初級の闇と雷属性の魔法を発動させる。

バチンッ!

((っ!!!!!))

2つの魔法を発動させてから融合してみたがお互いが嫌悪したように弾かれた。
雷は上へ、闇は下へと弾かれて霧散する。

「びっくりした。さっきのって雷と闇の攻撃系の魔法だよね?」

堺人は自分の魔法を発動せず燐に話しかけた。燐はコクと頷き深く思考を巡らせてみた。

「やっぱり、攻撃系だと相手を敵とみなして戦っちゃうのかな?」

魔法に意識はないため敵と判断したりはしないが例えとしてはこんな感じだろうか?と燐は堺人に聞いてみた。

「そうだね。自分以外を攻撃対象にしてるようなものだし...包囲系や防衛系だったり片方を防衛、片方を攻撃 みたいに組み合わせたりの方がいいかも...」

堺人はそう言いながら片方の手で氷の剣をもう片方に風の魔法を作り出す。

そして、それをひとつに重ねてみるがやはり燐の時と同じように パリン と氷の剣は砕け風は霧散した。

(やっぱり元からできた魔法を重ねるのは無理か...)

燐は堺人の結果を見てそう考え直した。
融合魔法は自身の魔力操作によって得られるものであり、アーニャのような魔力操作が苦手は者は不向きな魔法だ。

(だったら...ふぅ)

燐は目を瞑り、魔力操作に集中した。
元からある魔法では一体化しないのなら、魔法を発動する前の魔力で合わせれば良い。

そう考えた燐は手のひらを真正面にかざし火と闇を魔力で混ぜて発動するイメージをした。

すると...

ボンッ と言う音とともに燐の目の前で爆発が起こった。

「っ!シールド!」

なんとかちょくに受けずにすんだがかすり傷が足や手に残った。
堺人は驚きシールドを解いて急いで燐の元にかけつける。

「大丈夫か!燐!」

堺人は治癒魔法をかけてかすり傷を消していく。
燐は ありがとう と礼を言いながら珍しくキラキラした目で堺人をガン見した。

ドキッという鼓動がし、いやいや と顔を振りながら燐に どうしたの? と聞いてみる。

「できた...!」

燐は興奮したように両手を見つめて笑みを見せた。これまた可愛い笑顔を。

「今の...成功したのか?」

堺人は失敗して爆発したようにしか見えなかった。
しかし、燐は うん と頷き爆発した場所を指さした。

「!!...これは毒霧?」

爆発した場所は爆発の衝撃で床に穴が空く...ということはなく床が溶けているようにドロドロになっていた。

「そう!闇の毒霧と火の包炎弾 (ほうえんだん)を合わせてみた」

包炎弾は、炎が包まれた弾丸のようなもので対象物が近くにいると爆発する仕組みのある魔法だ。

攻撃系のではあるが、どちらかと言うとトラップに使うことが多く包炎弾を発動し透明化の魔法をその周りにかけることでトラップとしての役割となる。

「なるほどな。確かに包炎弾の中に毒霧があることによって爆発時に毒霧か周囲に飛び散ると言うかんじかな」

堺人が爆発した床とその周辺を見ながら紐解いていく。
それに1つ1つに頷きながら出来たとはしゃいでいる。

「これなら、僕にも出来そうだね...してもいい?」

堺人は毒魔法は得意な分類ではあるため試したくてうずうずしていた。

それに燐は どうぞ と首を縦にふった。

「ふぅ......」

堺人は心を落ち着かせ魔法を発動させる。
まずは、毒霧となる魔力を練りそれに融合するように包炎弾の魔力を練り合わせる。

堺人の足元と堺人が手をかざした先に魔法陣が浮かび上がった。

その魔法陣は赤と紫が混合した見たことがない魔法陣だった。

これは、うまく両属性の混合が上手くいった証だ。

そして、燃える丸い紫色の炎が出来上がった。
堺人は燐に目を向け爆発するよと合図を出した。

燐は頷き自分と堺人の前にシールドをはる。
安全を確保し堺人は手をゆっくりと下にふった。
それを合図のように炎が下へ移動していき床に触れた瞬間爆発した。

「できた?」

燐はシールドを解除し、爆発した床を見る。
煙が消え床が見え始めた。燐と同じくドロドロに溶けた床があった。

「成功したね!」

堺人は よし! と燐の前に手をかざす。それを見た燐は微笑んで堺人の手にふれハイタッチする。

「よし、色々試してみよう?」

堺人と燐は魔法が大好き人間だ。ここから魔力がつきるまで魔法を試したのだった。