才華龍学院 Ⅱ


カインの予想は当たった。

あれから20分ほどたった今でも試合は終わらなかった。

フィールドの地面は凍ったままだが、あちこちがでこぼこに削れてしまっている。

「空中岩 (くうちゅうがん)」

柳は中指と人差し指を揃えてフィールドの中心を示す。

すると、フィールドの中心に黒い球体が現れた。

「なんだ...?」

この魔法を蓮は知らなかった。
何が起きるのか全くわからない。

これは燐も同じであった。
今までこんな球体を見たこともないし属性すらも分からない。

「土柳!(つちやなぎ)」

柳はそう詠唱すると、中心にあった黒い球体から土が生えてきた。

そして、その土が蓮に向かって垂れ下がるようにして襲った。

それはまるで柳の木のようだった。

「っ...!」

蓮は急いで自分の周囲を植物で壁を作る。
いくつもの蔓が重なり剣も通さない壁ができる。

「だろうな」

それを見ていた柳は蓮の動きを予想していのかすぐさま魔法を放つ。

「空波 (くうは)」

柳は詠唱しながら黒い玉を指さした。
すると、黒い玉から空間を断つ波動が現れる。

その波動は土柳と蓮の間の空間を切り空間に穴を作る。

そこから、土柳が一気に伸びてきた。

「っくそ!」

それは蓮を貫き蓮はその場に倒れた。

瑠璃『試合終了!
八夜 柳 選手の勝利!』

柳はその言葉を聞いて一息を着いてその場に座った。

「凄かったな...最後の方の魔法は...」

カインは半ば腰を浮かせてその瞬間を見ていた。

あの黒い球体から次々と魔法が現れたように見えたことが不思議でならなかった。

「燐...あの魔法知ってる?」

アーミャも興味深そうに眺めながら燐に問う。
博識な燐であれば知っているのではないかと...

しかし、燐は知らなかった。
首を横に振りながらアーミャ同様に興味深そうにしていた。

「多分、空間系の魔法ではないかって思うんだけど...」

燐は頭の中であれではないか?これではないか?と思考をめぐらせていた。

「ほぉ燐先生でも分からないとなるとお手上げですなぁ」

アーミャはおてあげだと両手を上げながら言った。

それならば直接聞いた方が早いだろう。
4人は観客席を後にし、柳と紅葉の元に向かった。

〜・〜・〜・〜

「上手く行きましたね!」

フィールドを出るとすぐに紅葉が飛んできた。

「ああ。蓮相手だったからどうなるかと思ったがな」

柳は紅葉をみてひと安心した表情をする。

幼馴染でありライバルでもある蓮に負けたくなかった柳は自分の得意な魔法を研究していた。

そして、出来たのが空中岩だ。

「おつかれ!柳!
さっきの魔法はなんなんだ?俺たちじゃ全然分からんかったんだが...」

ちょうどそこにカインを先頭に燐達が来た。

「ありがとう。カイン
あれは俺が作った魔法だからな。」

「やっぱり、自作か。見たことない魔法だなって思ったよ。」

燐は やはり と柳に説明してと目線を送った。
すると、それが分かったかのか柳が説明し始めた。

「あの、空中岩は土属性と空間系の魔法を合わせたものだ。

自分が発動した魔法を空間移動しあの黒い球体から出るようになっている。」

「へぇ...面白ね」

燐は真剣に話を聞いてニヤッと笑った。
新しい魔法をしれて嬉しいのだろう。

「にしても、融合したのか2つの魔法を」

カインは顎に手を当てて呟いた。
柳は苦笑しながら頷き、カインもできるだろ と言ってみる。

が、カインは難しそうな顔をしていた。

「俺にはこんなこと出来ねーよ。
燐や堺人と違って魔法の細かい作業はどちらかというと苦手だ。」

お手上げだと両手を上げた。
それに、アーミャも同意した。

この2人は6人の中で魔法操作が下手で特に2つの魔法を操作しようものなら片方が爆発してしまう。

「......できるかも」

だが、燐は違った。
カインやアーミャと違って魔法操作は得意な方であり自分の得意な闇属性や雷属性では同時に発動することはできる。

それを融合し、持続させることはまだやった事がないだけでもしかしたら出来るかもしれないと考えていた。