(あいつは植物、俺は土...相性は良くないんだよな...)
柳は蓮の動きを注意して思考を巡らせる。
そして、柳が動いた。
「地中人厘!」
柳は地面に手を当てると、茶色の魔法陣が現れた。
「来たか...」
柳の動きを理解した蓮は上に飛び植物で自分が空中に居られるように支える。
すると、下のフィールドから手が現れ植物を地面に引き込む。
一定の深さまで潜ると止まった。
これが地中人厘という魔法だ。
相手を地中に引き込むのが本来この魔法の使い方であるが蓮はそれを知っている。
「なっ...あいつ!」
だが、それだけではなかった。
急に植物が枯れていくのだ。
「凩(こがらし)か!やられた!」
凩は木を吹き枯らす風の魔法だ。
蓮が下に注視しているうちに放ったのだろう。
「蔓舞樹 (つるぶき)」
蓮は地面に倒れる前に柳に向かって蔓が太く絡まったものを放った。
「地中人麟!」
堺人は地中から麒麟の形をした土を放つ。
フィールドの中心で土は砕け、蔓は千切れていく。
それは凄まじい威力で周囲を黙らせるほど、2人の闘いに沈黙して決着を見守っていた。
「柳って得意な魔法の威力が桁違いだよね」
燐は学院で雷属性の魔法を使った時の柳を思い出しながら呟いた。
それに激しく同意したのは堺人とカイン。
「ほんとだよな...俺はそんなに変わらんしなぁ」
カインは自分の手をグーパーしながら言った。
だが、アーミャだけは同意しなかった。
「そういうものじゃない?
うちだって闇属性なんて全然使えないもん。」
首を傾げながら燐たちたちを見た。
アーミャの得意と不得意の魔法を思い出した3人は静かに納得してしまった。
「なんで静かに納得してるのー!」
アーミャはすぐにつっこむが真剣な3人に無視されてしまった。
「むー...でも今回ばかりは分が悪いんじゃないかな?」
アーミャは柳と蓮が使う魔法を交互に見て話し始めた。
「そうだね。柳は土属性...あいては植物の魔法...
土にもよるけど攻撃力が落ちてしまうだろうね。」
燐の分析が始まる頃に柳と蓮に動きがあった。
「アイスロード!」
柳はフィールドの地面を氷に覆う。
だが、これをしてしまうと地面の土を使えないのか...
そう燐が思考していていると蓮がどの魔法を使うか悩んでいた。
「...やっぱり幼馴染だよな...」
蓮は苦笑いを浮かべた。
蓮の得意とする植物の魔法たが、その中でも地面から出てくる植物を得意としている。
その地面を封印されると魔法が使えない。
だが、それは柳もそうである。
土属性の魔法の幅が一気に狭まる。
「氷花 (ひょうか)」
蓮は氷の花を咲かせる。
同じ氷属性の魔法を発動した。
(まぁ、そうくるよな...)
それを読んでいた柳は土属性を使う。
「ブロックボール!」
柳は氷花の周辺にブロックボールを散らばし、
「地中人麟!」
その土を使って地中でしか作れないこの魔法を放った。
「ちっ...」
地中人麟に飲み込まれた氷花は爆発し役目を果たすことなく消えた。
それが分かっていた蓮は舌打ちをしながらも次の魔法を発動していた。
「あれは...失敗かな?」
燐は先程の魔法を見て堺人に問いかける。
それに堺人は頷いた。
「...どういうことだ?」
カインは何を言っているのか理解出来ずこちらも問いかけた。
「氷花だよ。
あの魔法はただ氷の花を咲かすだけじゃない。
氷花の花びらが全て爆弾になっているんだ。
そして、その爆発によって氷の欠片が飛び散るようになってる。」
「なるほどな...」
堺人の説明にカインは納得した。
「つまり、地中人麟に覆われて氷花は爆発しても欠片は飛び散らない...か」
アーミャはりんご飴を食べながら言った。
「こりゃ...長続きしそうだな」
カインは興味深々に試合を見つめる。
それに全員が頷いた。



