「...陛下?」

ミーナはエイミの声に驚き恐る恐る扉を開けた。

「ああ、入っていいぞ...」

何か考えているエイミはポツリとそういった。
ミーナはさらに不安になりエイミの側まで歩いた。

「どうかなさいましたか?」
「いや...少し頼み事があるのだが...」

エイミは思考がまとまったらしくミーナに真剣な表情と声音で頼み事をした。

ミーナはエイミの表情から個人的なものと判断し、エイミの側まで近づいた。

エイミはミーナの耳の近くでその内容を伝える。

「できるか?」
「はい!元萬屋の名にかけて!」

ミーナは満面の笑みで言い、エイミのもとから姿を消した。

〜・〜・〜・〜

『こちら扇...獄どこにいる?』

フィールドがいくつもある会場で扇は周囲に気づかれない程度に警戒して歩いていた。

『扇から見て4時の方向』

獄から返事が返ってきて後ろを振り向いた。
丁度こちらを見ていた獄を見つけ走る。

「どうだった?」

「異常なし...と言いたいとこだがな」

獄は躊躇いながらも周囲に目を向けた。
扇は獄と同じ方向を見るとそこに黒服にハーメルンのマークが入った男を見つけた。

「見たことあるマークだね...やだなー」

扇は面倒くさそうに、

よくもまぁ、白昼堂々と自分たちの素性を表すなぁ...

とため息をついてしまった。

「時期を狙ってるんだろうな。
俺と扇は大丈夫だろうが...燐はバレてるな」

「私たちを知っているのは流煉魔法戦闘科学園校 の小隊メンバー...か」

建物に背をもたらせていた2人は腕を組み考え始めた。

朧月たちからの指示はまだ入っていないため状況報告をするぐらいだろうか。

「しゃーない。このまま現状維持だね。
また何かあったら連絡よろしく〜」

そう言って才華龍学院の制服姿の扇は人に紛れて姿を消した。

これから、朧月たちに報告するのだろう。
燐たちはいつも通り学院生として大会に集中しているが扇や夕凪はそうはいかなかった。

「...それで何か用ですか?羅先輩」

獄は扇が完全に消えたことを確認し、独り言のように言った。

「あらら、バレてた?」
「ええ。一応俺は次元監視班にも所属しているので...

空間の歪みぐらいすぐ分かりますよ?
というか、それが本来の仕事です」

クスッと笑いながらアミラを見た。
どこから現れたのかアミラは獄の目の前にいた。

周囲にはたくさんの人がいるにも関わらずアミラが現れたことに気がついていない。

「ん〜...あの女王陛下は気がついてなかったけどなぁ...

流石、朧月の愛弟子だね。」

今のアミラは才華龍学院の時の姿だった。
髪は長く、眼帯をしている。

「それで、なんの用事ですか?」
「扇についてだよ。
前に気にして私に聞いてきただろ?」

扇の名前が上がった瞬間顔がひきしまった。
アミラはその表情を見てニヤッと笑うのではなくいつにもなく真剣な表情をした。

「アルテーナ諸国のエイミ女王陛下に情報を確認してきたよ。

獄に聞かれる前から気になっていたし...」

「俺の前に来るということは確認が出来たんですね?」

アミラはコクリと首を縦に降った。
扇とエイミは旧知の仲であり、お互い信頼できる友らしい。

獄が無実であること、扇がこの名前でグリムズに行くこともエイミは知っている。

知っていて2人を見逃したのだ。
何を思ってなのかは分からないが獄は少なくとも敵ではないと感じていた。

「で、何が分かっていたんですか?」

知恵の覇者と言われるアミラに獄は情報提供を要請した。

アミラはコクリと頷くと、人屋の隣に背もたれた。

「率直に言うと扇の命が危ないかもね。」