「昨日、王女様からの連絡はありました?」

髪をとかし終わった次女はくしを置き、エイミの前に出た。

エイミは液晶画面から顔を上げ満面の笑みで言った。

「ああ!もうあの可愛い声はたまらない。
キールと一緒に写っていたのだかな!

覚えたての言葉で、 がんばって! だって!
はぁ〜流石世界一可愛い私の娘だ!」

エイミは数年前に結婚し、長女が誕生していた。
アルテーナ諸国では王は女が務める珍しい国であり、王家は必ず女が最初に生まれる。

これは、王の血を引くもの全員がそうなのだ。
エイミの従兄弟も長女、次女、長男の順番に生まれている。

そして、エイミも例外なく長女が誕生した。

ミーナは さようですか と微笑みながら自分の仕事をテキパキとこなす。

「今日の予定は?」

エイミは朝食を取るためにテーブルに向かった。

光国では来客との食事は夜のみで朝と昼は個人でとることになっている。

「今日は特にございまん。
このまま光国の高校生達の試合を見るぐらいでしょうか。

しかし、何があるか分かりませんので護衛は増えるでしょう。」

ミーナは食事をエイミの前に慣れた手つきでだし、ペラペラと予定を話していく。

「緊急の会議が入ったしな。
敵が潜んでいるとわかれば会議どころてはなくなる。

情報を聞き出されるかもだし...」

エイミはそう言ってスープを口に含む。
光国の文化的な食べ物でなく、アルテーナ諸国でよく食べられるものばかりであった。

『食事中失礼するよ』

「...!?」

エイミは目を見開き、すぐ魔法が放てるように構えた。

『そんなに、構えなくていい。
私はグリムズの者だ。出来れば人払いをして欲しいけど...』

声は女性のものであった。
エイミは周囲を警戒して魔力探知の魔法をかけるがヒットしない。

(なかなかやるな...)

エイミはミーナたちを外に出させ、周囲を結界の魔法で声などを遮断する。

「で、何の用だ?」

エイミは優雅にスープを飲んだ。
もちろん、警戒を怠ってはいない。

「ちょっとばかし話がしたくてね。」

そう言って現れたのは園止 アミラであった。
アミラは才華龍学院の教師の制服ではなく、グリムズの朧月や花が着ていた制服であった。

色は黒地に青色。

「アルテーナ諸国の女王...エイミ・フラット・アルテーナ

で、間違ってないかしら?」

アミラは小首を傾げた。
エイミは制服を見た瞬間何割かの警戒を解いた。

「ああ。そうだが...?」

エイミはニヤッと笑いながら答えた。
アミラは よかった と微笑み口を開いた。

「私は、羅 (あみ)

名前の通り、グリムズの者さ。
女王陛下に聞きたいことがあって来たんだ。

言葉遣いはもともとこうなものでね。」

「いや、それはいい...
羅...月花部隊の者だな聞いたことがある。」

エイミは朝食を食べ終え、スプーンを置きアミラを真っ直ぐみた。

「良くご存知で...確かに私は元月花部隊のも者だよ。」

今のアミラは服装だけでなく髪型も違い、地面まであった髪は腰あたりまで短くなり眼帯は外されていた。

コードネーム、西京華 0 羅 (あみ)
本名、園止 アミラ

ハルパーの情報保管班に所属し、活動している。

今では、情報保管班の管理最高責任者であり全ての情報を知り尽くす知識の覇者だ。

そして、才華龍学院の教師として侵入しあらゆる情報を集め確かめる者でもある。

「私は情報を保管することが得意なんだ。
私の脳の中にはたくさんの情報がある。

その中に気になることが入ってた。

リオウ・アーリア、ヒトヤ・アルデールこの2人を知ってるね?」

「ああ。アーリア家の鬼才とアルテーナの鬼の子だろ。」

アミラは頷き、少しニヤッと笑った。
それがなんだか不気味でエイミは目を細める。

「じゃあ、その子達がどこにいるか...
果てはその子達の能力も知ってるんじゃないか?」

この言葉にエイミはビクッと反応した。

「何が言いたい?」

動揺したエイミは質問を質問で返してしまった。
アミラはエイミの反応で分かったようでまたニヤッと笑った。

「お・う・ぎ」
「!!」

アミラのたったこの言葉でもビクッと反応してしまうエイミにアミラはそれ以上何も言わなかった。

「......」

エイミは解いていた何割かの警戒を戻した。
それにアミラは苦笑してしまった。
急に笑い出すためエイミは素っ頓狂な顔をしていた。

「そんなに警戒しなくても...ふふ。
あんた可愛いね。」

「...なっ..///」

急に恥ずかしくなったエイミはフイッと顔をそむけてしまった。

「ごめんごめん。ついね。

その扇のことだけど気になることがあるんだよね。

.........」

アミラは自分が知っている全ての情報をエイミに話した。

エイミは静かにそれを聞いていく。

「この情報は間違っていない?」

「ああ。お前の言う通りだよ。
このことは、本人も知らないことだ。」

なるほど...とアミラは思考を巡らせた。
そして、最後にエイミに言葉を交わした。

「情報提供に感謝するよ。
これは流石に探っても分からなかったことだからね。

最後に君にいいことを教えよう女王陛下。」

アミラの次の言葉にエイミは目を見開いた。

「扇は今、この会場にいるよ。

探したければ勝手にするといいが...会うなら会うで分かってるよね?

扇のためにも...」

それだけを言って、アミラは黒い風となって消えてしまった。