「話を戻しますが、情報提供者はグリムズでございます。」

風座間が座ったままこれまでの経路を話した。

ハーメルンと薬師の荒川が手を組み企みを行っていることとその内容、
そのことを才華龍学院とローグレン魔法学院の元にグリムズの子供たちが伝えに来たこと。

「つまり、その子供たちが一時的に学院長の配下になったと言うことだな。」

話を聞き終えて光国の王は要約した。
魔獣の出現と対策など今のところは大きな問題は起こっていない。

「その配下になったグリムズたちは何をしている?」

今のところ魔獣の相手をしているのは国の騎士団や部隊、学校の生徒たち。

グリムズの子供たちは動いている気配を感じなかった。

「それは、言えません。掟に反するので

しかし、言えるとすれば半分は一時的に学院の生徒に半分は情報を探っています。」

質問に答えたのは朧であった。
今回のグリムズの子供たちを動かしてあるのは月、花、朧月とあと1人の3人。

殺たちの行動、情報は全てこの3人に行くようになっている。

「それで、今になって何故ここに?
魔獣は抑えれているのであろう?」

エイミが月に目線を合わせて言った。
このハーメルンの動きからして、アルテーナ諸国は全く関係ない。

ある意味、聞いてはいけない立場だ。
他国の情勢に関わることをこうも易々と言っていいものなのか。

「はい。最初は2つの学院が狙いであり、準備に1、2年はかかるだろうと予想していましたが...」

月はそこまで言って花を見た。
花は月の視線に気が付き頷いて口を開いた。

「予想はほぼ当たっていたでしょう。
薬を作っていた荒川を殺し、魔獣たちに使う薬を無くすことで少なくとも時間はかかるはず。」

だが、そうではなかったのだ。

「うちは薬剤に詳しい薬師であって、
荒川が何の薬を作っていたかは実際に作って分かりました。

うちの弟子がそれに成功したから。
でも荒川のように簡単には出来なかった。

弟子以外で作れるのは世界で荒川のみ。
なのに、薬の量は減るどころか増える一方。」

そこまでいえばこの場の全員察した。
荒川は生きているのだと。

「まず、ここが予想を外したとこ。
そして、もう1つあります。」

花はそこまで言うとまた月に変わった。
月は王たちが囲む机の中心に液晶画面を作る。

「これは、ハーメルンのアジトを指した地図です。

この中で、我々は1つのアジトに侵入することに成功。
中には囚われた身寄りのない孤児たちがいました。」

それが、美鳳たちのことだ。
そしてその者達が本当は戦いたくないこと、ハーメルンから逃げられないよう奴隷の魔法をかけられていることを伝えた。

「流煉と言えば...あの新しい学校か...」

「ええ。あの学校こそ私たちの鳥籠だと言っていましたからね。」

月は液晶画面に移るものを変えた。
映っていたのはここ周辺の地図であった。

そこには会場となる建物から街の家などがこと細やかに映し出されていた。

「奴らが狙ってくるのは学院ではなくこの全国代表戦...つまりここです。」

地図には赤色と青色の線が現れた。
会場周辺には赤と青色が半々、外部会場となる森周辺には青色、街には赤色が光っている。

「青色が敵、赤色が我々です。

この都市の街にはそう現れないでしょう。
現れたとしてもここは首都ですから多くの兵士や騎士がいます。

問題は、この会場周辺です。
とくに、外部会場となるここ。

ここは恐らく敵が潜んでいるのでしょう。
小隊での試合を狙っている可能性が出てきました。」

月はさらにそこに黒色の模型を映し出した。
それがなんなのか分かったエイミが口を開いた。

「思った以上に多いな...これだけの魔獣がいるとして生徒だけで対処できるのか?」

エイミの言葉に王たちも頷いた。
魔獣の数が多すぎるのだ。圧倒的に青の半分いや半分以上が黒色に染まっている。

「外部会場には、グリムズの子供たちが侵入又は選手として参加しています。」

「......」

王たちやエイミは無言になった。
生徒に混じってグリムズの子供がいるだなんて生徒達に何かあるのではないのかと心配になっていたのだ。

しかも、選手として出場しているあたりが特に気になる。

「...やはり、信用するにはな...」

光国の王の一言に学院長たちとグリムズの者以外は頷いた。

「...そうですね。確かに私たちに信用がないのは分かりますが...

考えてみてください。私たちが今まで手にかけてきたものたちを」

月がそう言い、王たちは それがどうした といいたげだった。

そこでエイミが言った。エイミは月の言いたいことが分かっていたのだ。

「殺さなければ世界の基準が崩れてしまう者
あまりにも残虐なことをした者
それをいつまでたっても辞めない者だったか」

エイミの言葉に王や王子たちがはっとする。
今まで殺されてきた者は自国に恐怖を与えるだろう行いを行った者。

死刑判決が出るような者ばかりだ。

「ちなみに...その暗殺対象となった者の中には平民から依頼されたものもありましたね。」

思い出したかのように月がニッコリと微笑みながら言った。

それを聞いた王たちは背筋がゾッとした。
苦しめられた人々からするとグリムズは唯一の救いの手であったのだ。

王族や貴族は信用出来ない又は言っても信じてもらえなかったのだろう。

特にその行為をしたのが貴族であれば疑うことはほとんどない。

「......」

王たちは黙り込んでしまった。
残虐な行為をしてもそれが分かったのは殺された後だった。

人口も多いため全部が全部分かる訳では無いが中には手助けをしてしまった貴族もいるのだ。

「信じろとは言いません。
ですが、我々の邪魔だけはしないようお願いします。

ハーメルンの目的はこの全国代表戦。
対応が遅れば、それだけ被害は大きくなります。

この会場周辺にはウルマス・サリアンが、
私共はあなた様方を守備することになります。」

ウルマス・サリアンという言葉に風座間が反応した。

風座間からすると蜘蔬たちは学院の元生徒。
行方不明になり、安否が気になっていたのだ。

「ウルマス・サリアンというのは...もしや...姉の方か...!」

風座間の答えに月は頷いた。

「ええ。自らグリムズに来た子達です。

今は立派な教師を務めていますが、故郷を守りたいということで今回はこの世界に帰ってきています。」

月の言葉にホットする風座間。
そんな風座間をよそに月は王たちを見て感情のない声で言った。

「信じろとは言いません。
ですが、我々の邪魔だけはしないでください。

今回は戦争になるほど激しい戦いになります。
それだけはお覚悟ください。」

月はまた優雅に一礼した。