「ほんで、今はグリムズで学校の教師をしとるんや」

蜘蔬はこれまでの経緯を話した。
グリムズに行ったあとのことはまた何処かで話をするとしよう。

「そんで、今更帰ってきたん?」

蜘夜は睨んだ目線で蜘蔬を見た。

レインと神無月はオドオドしているものの、姉たちが急にいなくなった悲しみはあるためか信用出来ないといった表情だ。

「まぁ、そうですよね。今更です、本当に。

ですが、私たちは妹が命の危険にさらされるかもしれないと言うのに黙っているわけがないじゃないですか。」

レイリは苦笑混じりだが、真っ直ぐとレインたちを見ていた。

蜘蔬たちは真剣に言っているのだ。
その妹ともなれば、それが本当とすぐに分かる。

「にしても、大隊長とはなぁ。
どんだけ成長すりゃええんやろかうちの蜘夜はんは!」

蜘蔬は蜘夜をいきなり後ろから抱きついた。
そして、ワシワシ と頭を撫で始めた。

うわぁー! と蜘夜は逃げようとするが蜘蔬の力は結構あるため、抜け出せない。

「……」

数秒後、逃げることを諦めいやいやされるがままだった蜘夜は言葉すら無くなった。

そんな蜘夜を見て周りは笑いだした。

同じ髪の色に瞳の色のこの姉妹たちは言葉では警戒しているようであっても表情は和やかなものだった。

〜・〜・〜・〜

「さて、感動の再開中のところ悪いんですけど…
師匠、何か情報はありましたか?」

騒がしかった部屋は扇の一言でシーンと静まり返った。

そして、扇の問に答えたのは珍しくも水無月であった。

「それが何も……」

扇たちが入手した情報が真新しかったらしく水無月は首を横に振った。

「そうですか…問題はいつ仕掛けてくるか」

扇は腕を組み、考え始めた。
そこで、燐やアーミャ、グリムズのメンバーたちがどんどん口を開いて言った。

「私は小隊の時に来ると思います。」
「うちもそう思います。向こうは小隊でしか出ていないし」

燐の意見に同意したのはアーミャであった。
しかし、陰と陽は違った。

「逆に、個人部門で来る可能性の方が大きく思うかな。

その間は自由に動けるし…?」

陽はそう意見した。それぞれ思考は様々だ。

「いや、個人部門で美鳳たちは動かないだろう。

そもそも、あの子達は今ではちょっとした有名人だ。

それは、殺や蝶も変わらないがそう簡単には動けまい」

獄は扇の代わりにそう想定した。
それに反論するものはおらず、また静まり返った。

「私もその考え。
だとすると、美鳳たち以外のハーメルンの孤児たち…もしくは幹部たち…」

「あっ、孤児たちですけど
すでにグリムズに脱退済みですよ。」

陽が手を挙げて扇に報告した。
それを聞いて了解した扇は孤児たちを標的から外した。

「殺、呪いの発動はいつになる?」

「…それが…出来ない可能性があります。」

燐のこの言葉で全体は静まり返った。
それは、当然であった。

闇の最高位にして、呪いの祖と言われているダーインスレイヴですら出来ないと言われれば誰だった呆然とする。

「出来ない?…なんでなん?」

最初に言葉を発したのは蜘蔬であった。
その事について燐が説明した。