「こちらウルマス・サリアン。2階は異常ありません」

一定の時間になると必ず連絡を撮らなければならない決まりなためレイリは少し小さめの声で言った。

『こちらフリミング・ユクア。了解した。

確認のところどの階も異常なしとのことだ。
継続して見回りを怠るな。』

この見回りの隊長はフリミング・ユクアの班長が行っており、報告は全てこの人に集まる。

どうやら3階での出来事には気がついていないようだ。

「…ねぇ、3階って誰が担当?」

水無月がふとそんなことを聞いてきた。
それに蜘蔬とレイリは答えようとしたが ストン と何かが落ちたように記憶に出てこない。

「誰やっけ?」

蜘蔬を首を傾げ、思いだそうとするが思い出せない。

ぼんやりと浮かび上がりもしない…
本当に分からない…

「…それはあとにしましょう。
今はこちらが先ですよ水無月」

レイリは考えることをやめて目の前のとこに集中した。
水無月も 了解 と小さな声で頷いた。

「グラビティ…足」

水無月はグラビティドミナシオンを召喚する。

だが、それは神無月がもつグラビティドミナシオンとは少し違った。

神無月のグラビティドミナシオンは
肩あたりまである木製の杖で、頂点にはオレンジ色でひし形の珠が光っている。

水無月のグラビティドミナシオンは
頭よりも高く伸びた木製の杖。
ここまでは、そう変わらないが頂点は違った。

そこにはオレンジ色のひし形の珠があり、その周りを輪っかが光っていた。

そして、その輪っかから帯がたれている。
白色に赤色の文字がびっしりと書かれており、垂れ幕のようだ。

このグラビティドミナシオンは4本の中で1番魔力を持っており、禁級契約武器に指定されたほどの物であった。

そのため、重力を制御するどころか契約者に重力を負わせてしまうほど強力で誰も契約しなかった。

水無月は唯一そのグラビティドミナシオンを制御仕切る強者だ。

そして、グラビティドミナシオンを使って細かな司令を出せる。

例えば、先程の グラビティ…足 と言うのは、
足にのみ重力を変えることであり、実際フリミング・ユクアたちは動けなくなった。

「あっ…あと手も」

水無月は思い出したように手にも重力をかける。

すると、フリミング・ユクアのメンバーたちの手がだらりと下がる。

手を上に持ち上げることが出来ないのだ。

「これで無線での通話は無理やろなぁ」

蜘蔬はクスクス笑いながら言った。
水無月のグラビティは強力なため抜け出すことはまず無いだろう。

「蜘蔬お願いします。」
「了解…ヒヒ」

蜘蔬は歯を見せてニヤリと笑って契約武器を召喚した。

「おいでな…セトはん」

闇暮のセトを召喚した蜘蔬は歩きながらその大鎌で1人1人切っていく。

「っ……!!」

フリミング・ユクアのメンバーたちは声にならない悲鳴をあげてバタバタと倒れていく。

「ん〜…もって1時間やろうね」

全員が倒れたところで振り返ってレイリに言った。

蜘蔬が行ったのは意識を現実から断つこと。
一時期意識をさえぎって気を失わせただけだ。

闇暮のセトは影を操り、あらゆる物をさえぎることができる。

最初は影をさえぎることがこの武器のもつ能力であったが、そのうちに様々なものをさえぎるようになり禁級契約武器となった武器だ。

「1時間もあれば充分です。中に入りましょう」

レイリも禁級の契約武器を召喚した。