「獄くん、扇ちゃんこの人たちを監獄にお願いしてもいい?」

円はそのために勝手に呼んだのにそんなことを聞いてきた。

「勿論。というか、そのために呼んだんでしょ?」

扇はクスクス笑いながらもナンブルラ・テンのメンバーを拘束していく。

「よし!完了〜!それじゃあまた後でね!」

扇は手をパンパンとはらう。
円は ええ と頷き魔法を使う。

「ものを彼方へと送りたまえ、転移の円」

フラフープの様な円の魔法陣を扇たちに潜らせる。

下から上へ魔法陣が動き、その魔法陣に潜った足は無くなっていた。

これは足が転移している証だ。
転移先にはその足があるはずだ。

扇たちが完全に転移した所で円は朧を見た。
そして、朧が頷くのを確認し新たに魔法を展開する。

「我は忘れる者、汝らの記憶を我に与えよ

忘却の円…」

円は静かに詠唱する。それと同時に円(えん)の魔法陣が現れる。

だが、大きさが今までと違った。
円を中心にその魔法陣は広がっては消えた。

この魔法はナンブルラ・テンのメンバーの記憶を裏部隊のメンバー全員を対象に忘れさせる魔法だ。

今、この建物にいる人は勿論。
明日、明後日この建物に来るナンブルラ・テンを知る人は知らずのうちに忘れていく。

それは、蜘蔬たちも例外ではない。
今頃忘れているだろう。

そのためこれを知っているのは
円である天莉亜と朧である朧月、そして扇と獄のみである。

〜・〜・〜・〜

円と朧に先に行けと言われ、蜘蔬たちは急いで階段を上がった。

「…あっ!まって!」

最後尾にいた水無月が急に大きな声を上げた。

蜘蔬は反射的に止まった。
すると、蜘蔬の目の前にフリミング・ユクアのメンバーでる男が目の前に現れた。

ばれた! と身構えたが男とは視線が合わない。
それどころか、こちらに気がついてもいない。

「どうしたんだ?」
「いや…下の階で物音がしたように思ったんだが…気の所為のようだ。」

男はこちらをまた見たが他のメンバーの元に戻った。

蜘蔬とレイリはお互い顔を見合わせた。
今、確実にこちら側を見ていたが蜘蔬たちを見ていなかった。

「どゆこと?」

蜘蔬は訳が分からず首を傾げる。
それはレイリも水無月も同じだ。

「…あっ……円の…」

そこで、水無月はふと頭に浮かんだのは円が魔法を発動するために言葉にした詠唱。

その中に 忍びの円 と言うものがあった。

「我、脅威となすものより隠すもの…でしたよね

水無月の考えが当たっていれば私たちは…」

「誰にも気づかれへん魔法ちゅうことやな」

蜘蔬の言葉にレイリは頷いた。
忍びの円は姿は勿論、魔力や気配も全て隠すことができる。

「そやったら、このまま中心に行けばええんやない?」

蜘蔬は姿が消えているにもかかわらず、覗くように4階を見た。

「そうですね…水無月、足止めをお願いします。」

レイリは水無月に指示を出した。

3人で行動をする時はレイリが指揮官となる。
これは蜘蔬たちも納得しているし、信頼している。

水無月は疑うことなく頷いた。

「さあ、行きますよ」