次の日の夜……いよいよ実行の日がやってきた。

「こちらウルマス・サリアン。2階の監視を行います。」

『了解。こちらフリミング・ユクア、4階の監視を実行する。

最近、物騒だからな気をつけろよ。』

「了解です。」

それぞれチームの名でどこに誰がいるのかを確認したレイリは液晶画面に映っている見取図を見ながら言った。

「今回の見回りですが、
1階はミスリム・ランブの4人
2階は私たちウルマス・サリアンの3人
3階はナンブルラ・テンの4人
4階はフリミング・ユクアの6人…

となっています。魔力や実力は私たちより下かほぼ同じですが経験は私たちがいちばん下です。

油断しないように」

レイリは緊張した声音でいった。

2階には蜘蔬、レイリ、水無月のウルマス・サリアンと朧、円のグリムズしかいない。

「うちらは4階に直行…朧はんと円はんは3階でナンブルラ・テンの足止め…でええんやろ?」

それに全員が頷いた。
今回の目的の場所は4階の情報管理室。
1階は無視していいだろうが3階はそうはいかない。

2階から4階に行くためには3階の廊下を通過しなければならない。

2階、3階を繋ぐ階段と3階、4階を繋ぐ階段はちょうど反対側にある。

これは、侵入者を容易に抜けさせないために作られた構造である。

勿論、転移という手もあるがそれは魔力探知で気づかれてしまう。
組織全体に知られてしまうことは絶対あってはならない。

そうなると、必然的にナンブル・テンを足止めし、4階の情報管理室に行かなければならなかった。

「先に私たちが襲いましょう。蜘蔬ちゃんたちはそのまま階段に向かって」

円の言葉に蜘蔬たちは頷き階段をのぼる。
しかし、その途中で円が止まるよう言った。

「どうしたん?」

蜘蔬は声を抑えて言った。
間近にナンブル・テンのメンバーがいるため気配を殺しながらまた警戒しながら円を見た。

「ちょっとね…」

円は朧を見ると、朧は頷き いいですよ と許可を出す。

「我、脅威となすものより隠すもの…忍びの円

全てを知り尽くせ…鑑賞の円」

円がそう詠唱すると緑色の円が現れた。

普通の魔法陣は円形で幾何学模様が描かれているのだが、円(まどか)の魔法陣は違った。

円形ではあるのだが真ん中は空洞。
何も描かれておらず、フラフープのようだ。

蜘蔬たちがそれが魔法陣であることに気づいたのは足元にあった緑色の円が天井まで上がった時だった。

「これは…」

レイリは不思議そうに魔法陣を眺めた。
それに円は くすくす と笑いだした。

「私特有の魔法…というより魔法陣だよ。
この特殊な魔法陣からコードネームの1文字になったて言ってたかな」

円はアハハと苦笑い。
それについて なるほど と興味津々の目を向ける蜘蔬たちだがいつまでもここにいるわけにも行かない。

「それじゃあ、行きましょうか。」
「はい。」

朧と円は階段をのぼりきり、勢いよくナンブル・テンの背後に走った。

「なっ……!!!!」

ナンブル・テンのメンバーが2人に気がついたのは気を失う直前の数秒…いや1秒あったかも分からない。

それぐらいの短さで3階を制圧してしまった。

朧と円、2人を相手に4人でチームを組んでいたナンブル・テンは不意打ちとはいえ手も足も出なかった。

「制圧完了〜」

円は付けていたバイザーを取った。
朧はバイザーを付けたまま、蜘蔬たちに合図を送った。

『私たちは少し用事があるので、先に行って下さい。』

手での合図を正確に読み取り、蜘蔬たちは2人を追い抜いて4階に向かった。