言うべきか…蜘蔬たちにはそんな葛藤があった。
「…興味ありますか?グリムズに」
男がそう言うと1歩前に出てきた。
すると、暗くて分からなかった男の顔が月の明かりに照らされて見えるようになった。
甘栗色の肩まである髪に白色瞳をしていて、
制服は詰襟に6つのボタンが2つずつ並んでおり軍服のように見える。
「「「……」」」
3人は顔を見合わせる。
男が言ったことはそのまま蜘蔬たちの本当の目的だからだ。
グリムズの出没の調査が本当の目的…任務であるのだが、蜘蔬たちは今はそれよりも興味のほうが優先されている。
「はい。興味があります。
グリムズのやり方に…私たちはもう疲れました。」
レイリは頷き素直に今の気持ちを言葉にした。
円と男は顔を見合わせてまたこちらを見た。
「…私たちはお前達よりも罪深い者ですよ?
貴族たちの尻拭いや国に反抗する者達を捕まえるなんて生ぬるいものじゃない。
暗殺です。毎回毎回人を殺しているんです」
男は目を細めて言った。
人を殺す
これがどういうことか分かっているのか、お前達はそれをできるのか…と聞かれているようだった。
「…はい。あなたたちが暗殺対象にしているのはそんな罪深い人々…違いますか?」
レイリがそう口にすると男と円は少しビクッと反応した。
「…そうね。私たちが殺してきたのは罪を重ねに重ねなおもそれを続けようとする。
そんな人たちは止めてもやめることはない。」
「だから、苦しんでる人たちの代わりに殺す…
苦しんでいる人たちにとっては嬉しいことでしょう。
ですが、それは私たちグリムズが自己満足でしていることに過ぎません。
その家族は当然悲しみグリムズを恨むでしょう。
結局は人殺しなのです。」
それでも、蜘蔬たちはグリムズに興味を持っていた、行きたかったのだ。
蜘蔬たちが所属する裏部隊も結局人殺しに過ぎないと蜘蔬たちは考えていた。
「それやったら、グリムズに行きたい。
罪のない人を殺すより、罪を重ねる人を殺す方がええ。
それに、殺された側の家族は悲しむやろうけど…それでも苦しんでいる人たちを助けたいんや。」
「それを自己満足と分かっていてですか?」
円がそう問うと蜘蔬、レイリ、水無月は頷いた。
円と男は顔を合わせた。
2人からすると蜘蔬たちが嘘をついているようには見えない。
だが、裏部隊に所属していることから演技の可能性もある。
判断を下したのは男であった。
「…上に言ってみましょう。
おそらくですが、グリムズはあなたたちを受け入れるでしょう。
ですが、それに伴う条件もあると思います」
男がそう言うと蜘蔬たちは 分かった と頷いた。