光国の特殊部隊は国王直属と裏部隊に別れる。
国王直属であれば主に国王や王妃、王子や王女の護衛や城を守るための部隊。
近衛兵のようなものだろうか。
それに対して裏部隊は名前の通り世界の裏を管理する部隊。
主には暗殺だろうか。
もちろん、表として魔獣の退治や罪人の護送なんかもしている。
国に害をなす者や団体、貴族たちの反抗…様々な理由で裏部隊は出陣してきた。
もちろん、精神的に病む人も多くいる。
『こんなことをするために部隊に入ったんじゃない…』
決まってそう言って部隊を去る人々。
学生の時からその部隊に所属していた蜘蔬たちは長い間見てきた。
だからだろうか…
「だからでしょうね。グリムズの行き方を知ったとき、私たちはすぐさま向かいました。」
〜・〜・〜・〜
「レイリはん!水無月はん!聞いてや聞いてや!」
この時、特殊部隊に所属していた蜘蔬たちの年齢は16歳…もうすぐ17歳の少女だった。
光国最強…ウルマス・サリアンと言われていた蜘蔬たち。
建国100年際であった大会は中等部1年生で3人しかいない小隊だったのに見事1位になった。
相手の小隊は8人。小隊が組めるギリギリの人数であった。
それでも蜘蔬たちは勝った。圧勝であった。
そして、才華龍学院は伝説をつくった。
そして、高等部に上がり初の全国代表戦で今いる特殊部隊にスカウトされたのだ。
「どうしたのですか?提出書も書かずに…」
レイリははしゃぐ蜘蔬を落ち着かせる。
水無月は黙って蜘蔬の次の言葉を待っていた。
「これやこれ!」
蜘蔬は魔法で作った液晶画面をレイリと水無月に見せる。
そこには、
グリムズの子供をついに発見!
光国、華龍都市東の才華地区で目撃情報
と言う記事が書かれていた。
才華地区は才華龍学院のすぐ側にある繁華街辺りのことだ。
「…学院の近く…」
水無月がそう呟いた。
才華龍学院の周辺をよく知っている水無月は首を傾げた。
グリムズが出入りする場所なんてあるのだろうか?…と。
「とりあえず行ってみましょう。どうせ任務なのでしょう?」
レイリは鋭い視線で蜘蔬を見た。
また何が起こるか分からない任務しかも暗殺のプロであるグリムズたちとの交戦となれば命がいくつあっても足りないだろう。
「せや。上司が言うからに持ってきたんや!
やけど、おもろそうやろ?」
蜘蔬はニヤッと笑う。
それは、レイリと水無月が面白そうと思っていることがわかっていたからだ。
「ええ。行ってみてもいいと思いますよ」
「…うん…」
レイリと水無月は微笑みながら頷いた。
興味があるのだグリムズに住む人に…
裏部隊だけあって、貴族たちが悪事を働いていたことは耳に入っている。
よく尻拭いなんかもした。
しかし、そういった貴族や医者、有権者が次々と殺されていった。
その9割がグリムズであろうと言われている。
実際に蜘蔬たちはグリムズが貴族を殺していたところを見ていた。
ノースリーブの服で紫色のリボン。
飴色の長い髪を二つくくりにしており、目元はバイザーを付けているため顔は分からなかった。
だが、唯一その人物を特定できるものがあった。
左腕に1文字が書かれていたのだ。
その文字は光国の文字で 円 と。
その人は蜘蔬たちを見るや一瞬で消えてしまった。
後を追うことにしたが跡形もなくどこに行ったのか分からなかった。
もしかしたら、その人に会えるのではないかと蜘蔬たちは思っている。
「……出発…」
蜘蔬たちは特殊部隊の制服を着こなし、念の為に普通の剣や銃を装備する。
そして、水無月は小さくそう呟いた。