「お疲れさまです!流石ですね!」

レインは一汗もかかず堺人たちがいる控え室に戻ってきた。

あっという間の戦いだったため周りの視線はもちろんレインに集中している。

「ありがとうございます。
そうだ!燐にいいことを教えてあげます!

千上の生徒ですが…1人だけ千上の理事長の娘がこの大会にいますよ。

その子が千上で1番強いと言われています。」

「千上の誇りとも言える人ですよね。」

燐は心当たりがあるようで頭に浮かんでいるのもその子だった。

「ええ。名前は千上院 京子
(せんじょういん きょうこ)

高等部1年生にして生徒会長を務める天才児です。」

(あの子が…ね)

レインの口から出てきた名前に聞き覚えがあったのか燐は少し目を見開いた。

そこで、燐はあの頃のことを思い出していた。

そんな燐の反応に気がついていた堺人は少し微笑む燐を見て 楽しそうだ と思ったが口にはしなかった。

「あっ、次は堺人の順番ではありませんか?」

話が伸びたためいつの間にか弓術部門の1回戦の時間になっていた。

剣術一刀流と弓術の会場は違うため、急がなければ間に合わなくなる。

「えっ!やばい!」

堺人は時計を見て驚く。
そして、急いで控え室を出ようとしたがそこで燐に止められた。

「まって、会場まで送る」

燐はそう言うと、燐と堺人の真下に魔法陣が現れた。
薄い紫色の魔法陣であった。

「えっ!これはもしかして転移魔法ですか!
個人で使うところは初めて見ました」

転移魔法は必ず魔法陣が必要であり、その魔法陣を創るのが難しい。

詠唱の中には魔法陣の構造に関する文章があり、それを数人で分担して創るのが当たり前である。

燐が今しようとしていることはありえないと言えるほど難易度が高く、それを実行していることが珍しいだろう。

それを詠唱破棄で行っているのだから周囲の目はモニターではなく燐に集まっていた。

「転移…」

燐が短くそう言うのと同時に光が2人を包み始めた。

「あっ!先生は」

そこで堺人は監督である葉杉の存在を改めて思い出した。

それは、燐も同じで急いで葉杉の腕を掴んだ。

ギリギリのところで転移が完了。
控え室には静寂が漂っていた。