「お疲れ!」
会場を出て控え室に戻って来たアーミャにカインは気づく。
「勝ったよ!」
アーミャはカインの目の前でニカッと笑いながらピースした。
カインは 見ていたぜ と頷く。
アーミャの詠唱破棄を披露したせいか、視線がアーミャに集中している。
だが、視線はマジマジ見るものでは無いためアーミャは気にすることなくカインと会話を続けるのであった。
〜・〜・〜・〜
「……えっ?」
堺人はアーミャの詠唱破棄を見て驚いていた。
まぁ、あたりまえか と燐は思いながら言った。
「えっ…て言っても普通に詠唱破棄だよ」
「うん、それは分かってるよ。ただ詠唱破棄なんて初めて見たから」
堺人は苦笑いで言った。
「でも、あれは1人でしたものではないかな」
燐はモニターを見ながら呟いた。
それに?を浮かべる堺人は どういうこと? と質問する。
「あの魔法、明らかに威力がオーバーしてるでしょ」
燐は ほら といつの間にか録画していたアーミャの試合を再生する。
「……確かに…この最初の魔法は第1 水飛沫だけど…魔法の威力がすごいな。」
堺人はブツブツと呟く。
堺人や蛟が言う第1とは、水属性に付けられている番号のことだ。
階級ごとではないがこれは主に全水の水雫と蛟の2人が使った(作った)魔法の順番と言われている。
水飛沫は蛟が最初に使った魔法であり蛟にとって使いやすい魔法ということにもなる。
蛟の場合は槍から全水の水雫は扇から現れる魔法なのだが、威力がまるで違う。
それは契約武器の階級があがるにつれて威力も上がるものだ。
アーミャが詠唱破棄して現れた水飛沫はその蛟の威力とほぼ同じかそれ以上であった。
水は雷に弱いはずが相手の雷属性の魔法を散らせてしまった。
それはただ単に水のほうが威力が強かったに過ぎないのだが、ここはそれぞれの都市で勝ち上がってきた強者がいる大会。
そう簡単に無力化させられるものでは無い。
むしろ、アーミャの実力を知っている堺人からしてもアーミャの魔法は威力が強すぎる。
ましてや、詠唱破棄までしているのだからおかしいのだ。
「あれは、顕現代理魔法だよ。」
「顕現代理魔法?」
堺人は周りに聞かれないように問う。
何となくあまり聞かれては行けないと思ったのだ。
「そう。顕現代理魔法は契約武器を具現化出来る者でしか出来ないのだけど…
具現化した契約武器は魔法を相手に向かって放てるでしょ?」
堺人は頷き、それで? と興味を向ける。
「だけど、具現化なしでは武器からでしか魔法は使えない。
そこで、契約武器を召喚(顕現)せず魔法が放てるように、
代理として契約者がその魔法を放つ。
それが、顕現代理魔法だよ。
これは具現化よりは簡単だけど契約武器と会話ができないといけないから」
そこで、堺人はなるほどと頷いた。
昔し、堺人は氷柱姫と会話をしたことがある。
それが嬉しくて父にその事を話したのだが、 氷柱姫を大事にしてるんだな と真に受けてくれなかった。
その理由がようやく分かった。
普通は会話ができないのだ。
「でも、よくよく見たらいるものだよ。
具現化出来る人はそういないけど、顕現代理魔法が出来る人は結構いる。
でも、やっぱり少数だから言っても信じて貰えないのが現状…かな」
燐は はぁ とため息をついた。
それだけ、この世界は契約武器に対して無知なことが多いのだ。



