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その頃、アーミャは相手をジーと見ていた。

(あの人どっかで見たことあるんだよなぁ…)

アーミャは自分の記憶をたどるが分からない。
だが、記憶の片すみにほんの一部で知っていると言っている。

そして、気をつけろと本能的に体が警戒する。

(それにしても読都市かぁ…陰の一族があったのも読都市…しかも月宮……)

アーミャはより警戒を高めた。
何となく警戒する理由が分かったアーミャは クスッ と笑った。

瑠璃『それでは、試合開始!』

瑠璃の言葉で開始のブザーがなった。
アーミャはそれを聞いた瞬間に動いてみた。

「さぁ、やろうかみーちゃん」

アーミャはここにはいない蛟に向けて呟いた。

『あまりやりすぎないでよ〜』

アーミャの頭の中で蛟がため息をつくのが聞こえた。

(近距離魔法は魔法しか使えない部門…だけど契約武器の魔法を使うことは出来る…

ルールを確認したけど武器だけは使ってはいけないしか書いてないしね)

アーミャは クスッ と微笑む。

(第1 水飛沫 (みずしぶき))

アーミャはそう心の中で呟いた。
すると、アーミャの足元には水色の蛇の模様が入った魔法陣が現れた。

フィールド全体に水が貯まる…ように見えるがそれは幻影であり、実際はそこに水はない。

弓美子は訳が分からず一方後に下がる。
アーミャはニヤっと笑った。

突如、水の刃が現れた。

「なっ!…水の針?」

それを間一髪避けた弓美子は一瞬で水の形を観察した。

夏希『なんと!詠唱破棄で魔法を発動しました!』

夏希は心の底から驚いている声だった。
詠唱破棄であれば何の魔法を使ったか現れるまで誰も分からない。

魔法を発動させるためにあるのが詠唱で、感覚を掴めば魔法名だけを唱えるだけで魔法が発動する。

これを無詠唱という。

無詠唱だけであれば才華龍学院の生徒ほぼ全員ができるが、その先へ進むものはほぼいない。

アーミャのように感覚だけを頼りに魔法を発動させるのは至難の業なのだ。

魔力を魔法に変換するためのキーワードである詠唱を破棄すれば当然魔法は不安定になり発動しにくい。

得意魔法であれば感覚が覚えているため発動はしやすい。

(まぁ、詠唱破棄は普通にできるけど…

やっぱりグリムズから離れてた分、不安定なんだよなぁ)

夏希の実況を聞いて苦笑いのアーミャ。
実際に今は蛟に手伝って貰っているのだ。

『感覚は大丈夫?
流石にそろそろ慣れないと戦えないよん?』

蛟はアーミャの頭の中で笑う。

今まで負けず知らずなほど強く、闘いについては誰よりも経験しているアーミャが今では蛟が手伝うことになっているのだ。

アーミャは少し ムゥ と頬を膨らますが否定はしなかった。

(こんなになるとは思わなかったよ正直ね)

アーミャは蛟と会話を交わしながらも詠唱破棄で次々と魔法を発動していく。

「雷鳴! (らいめい)」

弓美子はアーミャの魔法をかわしながらも反撃する。

水に対して雷は有効な属性ではあるが、その威力が相手より劣っていては意味がない。

(第2 水蛇!)

水飛沫の水を使って巨大な蛇を作る。
グリムズの島で見せた魔法だ。

扇は軽々と他の魔法にしたが、そう簡単には出来ることではない。

雷鳴は無残にちり、弓美子を襲う。

「くっ!…サンダーインパルス」

サンダーインパルスは長距離あたりで使う魔法であるが、近距離で使えば貫通力は上がる。

だが、それでも水蛇は破れなかった。
全くダメージを与えていない。

「そんな!」

弓美子は驚きと共に水蛇に飲み込まれ気絶した。

瑠璃『月宮選手戦闘不能によりアーミャ・ルグアス選手の勝ち!

それにしても、すごいものを見ましたね!』

夏希『そうですね。
まさか、詠唱破棄を使いこなす者をこの大会で見られるとは…

さて、次の試合に行きましょう!』

会場では未だにどよめきがある中、司会の2人は次の選手に注目した。