「久しぶりだね氷柱姫……一緒に戦ってくれるかい?」

実は氷柱姫を使うのは2、3年ぶりなのだ。
月島家の宝刀であるのもあるが堺人は基本的に弓を使うことが多い。

そのため、中々使うことがないのだ。

『……何言ってるの?私は堺人に仕える剣よ。
あなたが使いたいのなら使えばいいのよ』

少しとげのある声音と言葉が聞こえる。
この声は勿論条件をクリアした僅か数人しか聞こえていない。

「そっか…じゃあ使わせてもらうね」

堺人は小声でいった。
それに氷柱姫は ええ と頷く。

「辻本流水反転 (つじもとりゅうみずはんてん)!!」

ミイナはミズハノメを左右につく。
堺人は軽々と避ける。

「……つっ!」

堺人はあることに気付き一気に距離を取った。

すると、さっきまでいた場所から水の刃が空を切る。

水の刃が現れた位置はミズハノメを左右についたところだった。

そこから滴るように水の刃が現れ反転し突き刺す。

(水反転……厄介だな)

堺人は冷や汗をかく。

「ほー、これを最初から避けたの君が初めてだよ~新人君」

ミイナは面白そうに笑う。
堺人は ありがとうございます と苦笑いする。

(氷柱姫にしておいてよかった)

堺人は心の中でそう思った。
安心しているのもつかの間ミイナが一気に距離を積めてきた。

「辻本流 大津波!」

ミイナはミズハノメの横に一閃する。
すると一閃した場所から大量の水が少しずつ多くなりながら堺人を襲う。

「氷度零立 (ひょうどぜろのたち)」

氷柱姫の周りから冷気が放たれる。
氷柱姫の刃が零度近くになっているのだ。

ミズハノメの大津波が堺人の目の前までに迫ってきた。

堺人は氷柱姫を自分の目の前に持ってきて両手で振り下ろす。

パキパキ、メキメキ という音とともに堺人を中心に大津波の水は凍っていた。

「なっ!」

ミイナは驚いたがすぐに頭を切り替えた。
流石、都市代表である。

「辻本流 熱湯の舞 (ねっとうのまい)」

ミイナは堺人に向かってミズハノメを振る。

それを受け止める堺人だが水反転と同じく水が滴るようにして攻撃してくる。

堺人は完全に避けきれず頬にかする。

「熱っ!!」

微かに触れただけなのに熱かった。
堺人は頬に手をあてる。

フィールド内では怪我をすることはないが温度と痛みはそのまま神経に伝わる。

だが、堺人は動揺することなく避けることを止め氷柱姫で受け止める。

「アイスワールド (氷柱の世界)」

堺人がそう唱詠すると攻撃してきた水は氷柱のように凍った。

熱湯であるためそう簡単には凍らない。

「……!…寒い」

ミイナは対峙するなか一息をつく。
息は白くなっており寒く感じる。

「まぁ、それがこの子の得意技ですから」

堺人はクスッと苦笑いしさらに攻撃を仕掛ける。

堺人の息も白くなっているが寒さは感じない。
元々、神級である氷王弓は召喚した時から自分自身が感じる体温が下がる。

いや、感じるではなく実際に下がっているのだ。

「これで終わりです」

堺人はミズハノメをクルッと反転させる。
寒さで凍えるミイナからミズハノメを手から外すのは簡単であった。

カランとミズハノメが地面に落ちる。
それと同時にミイナの胸あたりに氷柱姫を伸ばす。

「……っ!…刺さないの?」
「できれば降参してほしいのですが…」

死にはしないことは分かっているがやはり刺すことはあまり気持のいいものではない。

「……こんな屈辱はないかもね…まぁ勉強になったよ。」

ミイナはクスッと笑い、両手を挙げた。
降参の意だ。

瑠璃『辻本選手リタイア!
よって、華龍都市代表 月島選手の勝利!』

周りからどよめきと拍手が混じった。
拍手をしているのは今日予選がなく観客席で見ている華龍都市の生徒が主だった。