次の日

いよいよ出発の日だ。
全国代表戦は首都である彩光都市で行われる。

その都市に向かうためには、馬車と汽車で丸1日かけなければならない。

「えーと、これは……」

堺人は目の前にある馬車ではなく“上”を見ていた。

「これは、学院が所有している飛行艇です。」

上に浮かんでいる飛行艇は鯨のような形で、中心あたりには才華龍学院の校章が描かれていた。

原動力は風と空間の魔方陣だ。
それを監視する者、調整する者がいる。

「これで、一気に首都にいくんや」

蜘夜は荷物を置いて上を向く。
地形を気にせずに一直線で行ける唯一の乗り物だ。

「これまた始めてみるね~」

扇とアーミャは おお~ と手を額にあててはしゃぐ。

「乗り心地はええでぇ~」

蜘夜は親指を立ててグーとする。
それにレインは頷いたが神無月は嫌そうな顔だった。

「……乗りたくない」

神無月の顔はみるみるうちに青ざめていく。

「だっ大丈夫ですか?」

紅葉は心配で神無月に声をかけた。
神無月は 大丈夫 といってさっさと飛行艇に向かった。

「あー、神無はんは乗り物酔いするんや。」

蜘夜はそれだけ言って神無月を追いかける。
いつの間にかレインは神無月の隣にいた。

「なんか、楽しそうな乗り物です!」

紅葉は神無月と違ってワクワクしていた。
そうなのか? という言葉が扇とアーミャ以外の燐たちは頭に浮かんだ。

~・~・~・~

そして、全員乗り込み出発してから30分。

「うぅ……気持ち悪いです」

乗り物酔いを起こしたのは楽しみにしていた紅葉だった。

「大丈夫か?……部屋に戻ったほうがいいな」

柳が問いかけるが答えることができなかった紅葉。
それを確認して柳は紅葉を抱き抱えて部屋に戻る。

「大丈夫か?あれ」

カインはギリギリ苦笑いの表情で紅葉と柳が出た扉をみる。

紅葉の表情は本当にひどく、青ざめていた。

「まぁ、柳がいるから大丈夫なんじゃないかな?」

堺人も苦笑いのままそう答え、燐、扇、アーミャがいる方向をみた。

「こっちはこっちでなんとかしないとな」

堺人が向けている視線の方向に気がついた獄がいった。

燐、扇、アーミャは外の景色を目をキラキラさせて見ていた。

「獄さん、あれは何なんだ?」

いつも、何でも知っていそうな3人が横一列に並んで興味深々にガラスの窓に張り付いていることに心配になってくるカイン。

「んー飛行艇は初めてだし、上から光国の景色を見ることがないからな。」

ハハハと苦笑いの獄。

獄いわく3人は見たことが無いものにはとことん知り尽くさないと気がすまないらしい。

扇やアーミャならまだ分かるのだが燐もというのが面白い。

「ことろで、獄さんもグリムズの人ですよね」

堺人は獄を見て、今更なことをきく。
それに、獄は ああ と答えてくれた。

「それじゃあ、燐と同じ暗殺処理班…」

なんとなくだが、そんな感じがした。
燐や扇、アーミャは陰と陽とはまた違ったなにかを感じる。

いつでも暗殺可能な状態のような。

殺気こそないが隙がなく、襲ったとしてもこちらがやられるだろう。

それを獄からも感じられるのだ。

「……それは、ほいほい聞いていいことではないよ。

扇や燐だったら教えてもらえるだろうけど、俺はあまり教えられないな」

獄は少しにらむ感じで答えた。
堺人は すみません と謝った。

「いや、分かってくれればいいんだ。」

獄は苦笑いで言って、扇を見ていた。